日本大百科全書(ニッポニカ) 「アフタ」の意味・わかりやすい解説
アフタ
あふた
aphtha
粘膜に発生する小さい円形ないしは楕円(だえん)形のきわめて浅い潰瘍(かいよう)状の病変をいう。表面には白色偽膜(ぎまく)様の繊維性物質が付着しており、周囲の粘膜はやや赤みを帯びて、紅暈(こううん)とよばれる。アフタは一つの病状であり、いろいろな原因によっておこるほか、全身性疾患の症状の一つとして発生することがある。
もっとも頻度の高いのはアフタ性口内炎で、直径2~4ミリメートルほどのアフタが口腔(こうくう)粘膜に発生する。好発部位は口腔の前方で、舌、歯肉、口唇などに1個ないし数個みられ、痛みがある。原因として機械的刺激、アレルギー、疱疹(ほうしん)ウイルスの感染、精神的ストレス、ビタミン不足などが考えられているが、原因不明のことも多い。このようなアフタは通常4~5日で治癒し、瘢痕(はんこん)を残さないのが特徴。アフタ性口内炎はしばしば再発を繰り返すものがあり、これを再発性アフタとか習慣性アフタという。再発性アフタのなかには、全身疾患の一症状のこともあるので注意する。
ベーチェット病はアフタ性口内炎に、目のぶどう膜炎と外陰部の潰瘍が合併する。アレルギーに関連する多形滲出性紅斑(しんしゅつせいこうはん)や結節性紅斑などで、再発性アフタを合併することもある。再発性ではないが、水痘、手足口病、ヘルパンギナ、帯状疱疹などのウイルス感染症で、アフタが発生することがある。
[河村正三]