クンシラン(その他表記)Clivia

改訂新版 世界大百科事典 「クンシラン」の意味・わかりやすい解説

クンシラン (君子蘭)
Clivia

南アフリカ原産のヒガンバナ科の多年草。3種を含む小さな属であるが,そのうち一般にクンシランの名で呼ばれるウケザキクンシラン(一名オオバナクンシラン,またはハナランC.miniata Regel(英名Kaffir lily)が園芸的に重要な観賞植物となっている。クンシランの名は,最初はC.nobilis Lindl.に対する和名として使われたが,この種は一般には栽培されていない。ウケザキクンシランは葉が濃緑色で軟らかい革質で広線形,長さ40~60cmとなり常緑,2縦列に束生して茂る。通常4~5月ころ,高さ40~50cmの太い花茎を出してその頂の散形花序に,直径3cmくらいのユリ状6弁花を10~20個つける。花後よく結実し,紅熟する漿果(しようか)をつける。

 多数の園芸品種があり,ヨーロッパ,とくにドイツで改良されたドイツ系クンシランは,大輪で花つきよく,花色も鮮橙赤色で美しく,広く栽培されているが,日本で改良されたものに葉が短くつまって生育するダルマ種があって珍重される。斑入葉や,キトリーナという鮮黄色花をつけるものもある。温室鉢物として栽培される。排水通気性のよい培養土で植え,半陰地に置いて育てるのがよく,日向地では葉が傷みやすい。越冬最低温度は3~5℃。繁殖株分けまたは実生による。植え時は4~5月がよい。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「クンシラン」の意味・わかりやすい解説

クンシラン
くんしらん / 君子蘭
[学] Clivia miniata Regel

ヒガンバナ科(APG分類:ヒガンバナ科)の不耐寒性多年草。ウケザキクンシランともいう。元来クンシランの名はC. nobilis Lindl.のことで、花が下垂して咲くものをさすが、一般にはminiata種をクンシランと称している。南アフリカ原産で、1845年にヨーロッパに紹介され、日本へは明治末年に渡来した。根は太い多肉状で、地際にうろこ状の短縮茎があり、これから剣状の長い葉を左右に展開し、3~5月、葉間から太い花茎を伸ばし、その先に6~9弁の花を散形状につける。花は径4~7センチメートル、花色は橙紅(とうこう)色で筒部は淡黄か白色。生育適温は15~20℃で、半日陰の室内などでよく生育し開花する。開花時以外も葉や草姿が美しく、周年観賞できる。0℃近くで長時間置くと凍害を受け、また、直射日光下では葉焼けをおこす。繁殖は実生(みしょう)と株分けによる。実生は開花まで5~6年かかる。株が古くなると側芽を発生し株立ちとなるのでこれを分ける。鉢栽培では2~3年で多肉根が鉢内に回るので、植え替えをする。株分け、植え替えとも5~6月にする。用土は赤玉土、腐葉土を半々くらいとする。ベルギー、ドイツ、オランダなどで品種改良が行われたが、日本でも、葉が幅広で短く、整然と並んで外側に反転するダルマ系や、美しい斑(ふ)が入る品種が育成されており、一般に鉢花とされる。貴品はその株の価格がきわめて高価で取引されるものもある。

[鶴島久男 2019年1月21日]


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百科事典マイペディア 「クンシラン」の意味・わかりやすい解説

クンシラン(君子蘭)【クンシラン】

南アフリカのケープ地方原産のヒガンバナ科の常緑多年草。葉間から出た40cm前後の花茎の頂部に6〜7月,20〜30輪の花を房状につける。花はやや下垂し,筒形で,赤だいだい色の花被片は正開しない。現在〈クンシラン〉の名で一般に栽培されているものは,上記のものとは近い別種のウケザキクンシラン(別名ハナラン)で,この原種は南アフリカ,ナタール地方原産。5〜6月,1花茎に10〜20輪の漏斗(ろうと)形に正開した,黄だいだい〜赤だいだい色の花を散形状につける。鉢植,切花にされ,改良品種もある。両種とも冬季はフレーム内に置き,凍らせぬ注意が必要。繁殖は株分け,実生(みしょう)による。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「クンシラン」の意味・わかりやすい解説

クンシラン(君子蘭)
クンシラン
Clivia nobilis

ヒガンバナ科の常緑多年草。南アフリカ原産であるが,観賞のために広く栽培されている。日本などの温帯では冬は温室に置く。葉は幅 3cm,長さ 40~50cmの革質で濃緑色。早春,葉の間から花柄を出して,赤橙色の花数個が散形につく。これに近い種にハナラン C. miniataがある。

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