グルー(読み)ぐるー(英語表記)Joseph Clark Grew

日本大百科全書(ニッポニカ) 「グルー」の意味・わかりやすい解説

グルー(Joseph Clark Grew)
ぐるー
Joseph Clark Grew
(1880―1965)

アメリカの外交官ボストンの生まれ。ハーバード大学卒業後国務省に入る。第一次世界大戦時はベルリンウィーン駐在、休戦後はバーゼル、パリ平和会議に参加する。戦後はデンマーク、スイス公使を経て、中東問題の処理に関与、1927年トルコ大使となる。1932年(昭和7)駐日大使に就任。日米関係険悪化のなか、一部の宮廷勢力、官・財界との接触を深め、対日宥和(ゆうわ)外交を展開した。開戦後は国務長官特別補佐官、極東局長、国務次官(1944年12月~1945年8月)を歴任。省内の「日本派」として天皇制の存続を主張、戦後日本の徹底した民主化に反対するなど、対日戦の処理、占領政策に大きな影響を与えた。主著『滞日十年』(1944)など。

牧野 裕]

『W・ハインリックス著、麻田貞雄訳『日本外交とグルー』(1969・原書房)』


グルー(Nehemiah Grew)
ぐるー
Nehemiah Grew
(1641―1712)

イギリスの医師。ウォーリックシャーの牧師の子として生まれる。ライデン大学医学を学び、帰国後、コベントリーで、のちロンドンで開業。医業のかたわら動植物の研究にふけり、一時期フックとともにロイヤル・ソサイエティーの書記を務めた。主著の『植物解剖学The Anatomy of Plants(1682)は、当時の最高水準のもので、植物各部の縦断面や横断面の顕微鏡観察の成果が、83葉の精密で美しい銅版画で示されている。彼は、植物体はレース状に編まれた繊維によって構成されていると考えた。また、雄しべと雌しべの生殖的役割を初めて明らかにした。

[檜木田辰彦]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「グルー」の意味・わかりやすい解説

グルー
Grew, Joseph Clark

[生]1880.5.27. ボストン
[没]1965.5.25. マサチューセッツ,マンチェスター
アメリカの外交官。 1902年ハーバード大学卒業。カイロのアメリカ領事館書記官を振出しに外交官生活に入った。パリ講和会議にはアメリカ代表団の一員として活躍。 20年デンマーク駐在公使,21年スイス駐在公使,27年トルコ駐在大使。 32年日本駐在大使となり,41年日米開戦まで日米関係の平和的打開に努力した。 42年帰国し 44年まで C.ハル国務長官の特別補佐官。 44~45年国務次官。対日終戦工作では天皇制の廃止に反対した。 45年引退。多くの著書があるが,特に『滞日十年』 Ten Years in Japan (1944) は在日中の日記や公文書,私文書などに基づくもので,日米関係史にとって貴重な資料。

グルー
Grew, Nehemiah

[生]1641. ウォリックシャー
[没]1712.3.25. ロンドン
イギリスの植物学者,医者。父は牧師。ケンブリッジ大学卒業後,1671年ライデン大学で医学の学位を取得。故郷で開業したが,のちロンドンに移る。顕微鏡を駆使して植物解剖学の研究を進めた。植物細胞,植物の茎の道管の発見など,同時代の著名な解剖学者 M.マルピーギと業績を分ち合う部分も多いが,マルピーギが動植物の類似性を強調したのに対し,グルーは植物の独自性を追究し,「幼芽」「幼根」といった植物独自の用語もつくりだした。また,葉の裏面に気孔を発見し,空気の取入れ口であると考えた。特に有名なのは主著『植物解剖学』 The Anatomy of Plants (1682) で明らかにされた植物の生殖器官に関する知見である。マルピーギと並んで近代顕微鏡解剖学の祖といわれている。

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