ケイ藻(読み)けいそう(その他表記)diatom

翻訳|diatom

改訂新版 世界大百科事典 「ケイ藻」の意味・わかりやすい解説

ケイ(珪)藻 (けいそう)
diatom

ケイ藻綱Bacillariophyceaeに属する藻類総称で,現存する種類数は6000~1万といわれる。海水にも淡水にも生育し,浮遊性(プランクトン性)のものが多いが,また底生,付着性のものもある。体は単細胞性で,ケイ酸質を含む2枚の殻が上下に弁当箱のように入れ子になっている。しかし,二分裂による無性生殖をするため,個体が鎖状に連なったり,粘液質中に多数埋まったりして群体をつくるものもある。いずれも色素体内にクロロフィルacのほかにフコキサンチンなどの色素を含み,光合成によりβ-1,3結合を主としたグルカンであるクリソラミナランchrysolaminaranや油を生産して貯蔵する。殻の表面にある微細な相称の模様により次の二つの目に分類される。

(1)中心目Centrales 体の基本形は茶筒状で,殻の表面の模様は放射相称である。色素体を多数もち,有性生殖は卵と遊泳性の精子による。海産のものが多い。次の3亜目に分類される。(a)盤状亜目Coscinodiscineae 蓋殻の縁辺に1列の輪状突起列をもつ。タルケイソウMelosira,コアミケイソウCoscinodiscus,カラカサケイソウPlanktoniellaなど。(b)ウロコケイソウ亜目Rhizosoleniineae 蓋殻に1個の突起部をもつ。ツツガタケイソウRhizosolenia(一名ウロコケイソウ)など。(c)イトマキケイソウ亜目Biddulphiineae 蓋殻に2個またはそれ以上の突起部をもつ。イトマキケイソウBiddulphia,ツノケイソウChaetoceros,ミカドケイソウTriceratiumなど。

(2)羽状目Pennales 体の基本形は弁当箱状で,殻の表面の模様は左右相称である。色素体は1~2個で,有性生殖は接近した2個体の開いた上下の殻の間から原形質がアメーバ状に出て接合することによる。淡水産のものが多い。次の2亜目に分類される。(a)無縦溝亜目Araphidineae 上下両蓋殻ともに縦溝をもたない。オビケイソウFragilaria,ホシガタケイソウAsterionella,ハリケイソウSynedra,ヌサガタケイソウTabellariaなど。(b)有縦溝亜目Rhaphidineae 蓋殻の片方か両方に縦溝をもつ。ツメケイソウAchnanthes,コバンケイソウSurirella,フナガタケイソウNavicula,クサビケイソウGomphonema,クチビルケイソウCymbella,ハネケイソウPinnularia,イチモンジケイソウEunotiaなど。

 すべてのケイ藻は二分裂による無性生殖を行う。まず核や色素体などの細胞内容物が分裂し,やがて上下に2枚の殻が分かれ,親と同じ大きさの個体と,親より小さい個体ができる。このような分裂を繰り返すと,小さい方の個体の大きさは減少化の方向をたどることになる。そこで有性生殖を行って体の大きさを回復させる。このときつくられた接合子は増大胞子auxosporeと呼ばれる。

 ケイ藻類白亜紀の地質時代に大発生をしたらしく,この時代の地層に多数の化石堆積物が発見される。このケイ酸質の堆積物をケイ藻土といい,ろ過器のろ材,吸着材,研磨材などの原料に用いられる。なお化石の記録によると,白亜紀のケイ藻は海産種であり,淡水産の種類はそれより数千万年遅れて第三紀の漸新世に出現したと考えられる。
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百科事典マイペディア 「ケイ藻」の意味・わかりやすい解説

ケイ(珪)藻【けいそう】

ケイ酸質を多量に含む2枚の堅い細胞壁の殻で包まれる単細胞の藻類。淡水・海水の両方に見られる代表的な植物プランクトン。しばしば群体をつくる。殻は上殻・下殻と呼ばれ,つづらのように重なり合い,表面には微細で精巧な模様がある。普通は二分裂による無性生殖で増えるが,卵と精子による受精雌雄の体が接合し,増大胞子を形成する有性生殖もする。体にはクロロフィルaとcのほかにフコキサンチンなどを多量に含み,体は褐色を呈する。
→関連項目ケイ(珪)藻土

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