日本大百科全書(ニッポニカ) 「ゲーレン」の意味・わかりやすい解説
ゲーレン(Arnold Gehlen)
げーれん
Arnold Gehlen
(1904―1976)
ドイツの社会学者。ライプツィヒ大学に学び、第二次世界大戦中は同大学、ケーニヒスベルク大学(現、イマヌエル・カント・バルト連邦大学)、ウィーン大学で教鞭(きょうべん)をとったが、戦後はシュパイエル行政科学大学教授を経て、1962年以降アーヘン工科大学教授。哲学者として出発したが、しだいに社会学に移り、哲学的、社会学的あるいは社会心理学的に生物界における人間の置かれた特殊な立場を研究し独自の人間学を打ち立てた。現代社会に特徴的な産業および技術の時代をとらえるために、自由や疎外の問題にも心理学の立場から研究を進めたが、「哲学的人間学」のドイツにおける第一人者としての名声が高い。主著に『人間学の探究』(1961)、『技術時代における人間』(1969)がある。
[鈴木幸寿 2015年2月17日]
『亀井裕他訳『人間学の探究』(1970/改題復刊版『人間学の探求』・1999・紀伊國屋書店)』
ゲーレン(Reinhard Gehlen)
げーれん
Reinhard Gehlen
(1902―1979)
ドイツの軍人、諜報(ちょうほう)活動専門家。第二次世界大戦中、国防軍防諜部で旧ソ連関係の諜報活動責任者となり、きわめて正確な情報を収集してヒトラーを驚かせた。大戦末期にアメリカ軍に投降。戦後は、経験を買われてアメリカ軍から資金の提供を受け、ゲーレン機関といわれた対ソ諜報組織をつくり、鉄のカーテン背後の情報収集にあたった。1955年旧西ドイツ連邦政府情報部の責任者に起用されたが、1968年部下の2人がソ連のスパイであったことが判明、辞任した。
[藤村瞬一]
『赤羽龍夫監訳『諜報・工作――ラインハルト・ゲーレン回顧録』(1973・読売新聞社)』