日本大百科全書(ニッポニカ) 「コクタン」の意味・わかりやすい解説
コクタン
こくたん / 黒檀
ebony
[学] Diospyros ebenum Koenig
カキノキ科(APG分類:カキノキ科)の常緑大高木。樹皮は黒灰色で若枝には粗毛がある。葉は互生し、長楕円(ちょうだえん)形、長さ6~12センチメートル、全縁で革質。雌雄同株。花は葉腋(ようえき)につき、雄花は短い花軸に3~6花つき、雌花は単生する。花冠は白色、筒状で、上半部は4裂し、萼(がく)は杯(さかずき)状で上部は4裂し、縁(へり)に毛がある。雌花は雄花より大きく、退化した雄しべと雌しべが1本あり、萼は花期後に大きくなる。果実はカキに似ているが小さく、扁球(へんきゅう)形で径約2センチメートル、種子は黒色で3~8個ある。
インド南部、スリランカの原産。本黒檀とよばれるものの代表的な種類。辺材は灰色で黒色の筋(すじ)があり、心材は真黒色で、質が緻密(ちみつ)で堅く比重が大きい。磨けば鏡のような光沢が出るので、いわゆる唐木(とうぼく)のなかでも珍重され、床柱、高級家具、楽器、額縁、箸(はし)、彫刻、そのほか美術工芸材にする。一般には本種のみでなく、熱帯、亜熱帯の約200種のカキノキ属のうち材の美しいものを黒檀と総称することもある。D. chloroxylon Roxb.は青黒檀といわれ、インド、ミャンマー(ビルマ)、タイ原産で、辺材は黄白色、心材は黒緑色。ミャンマー原産のD. ehretioides Wall.やフィリピン原産のD. philippinensis A.DC.、そのほか縞(しま)黒檀といわれるものは、心材が黒色で赤褐色の縞がある。ベンガル湾のアンダマン諸島、マレー半島原産のD. kurzii Hiern.やスリランカ原産のD. insignis Thw.は、心材に黒色や灰色の大理石状の斑紋(はんもん)があり、斑(ふ)入り黒檀とよばれている。
[小林義雄 2021年3月22日]