日本大百科全書(ニッポニカ) 「タガヤサン」の意味・わかりやすい解説
タガヤサン
たがやさん / 鉄刀木
[学] Senna siamea (Lam.) H.S.Irwin et Barnerby
Cassia siamea Lam.
マメ科(APG分類:マメ科)の落葉高木。高さ15メートル、胸高径40~50センチメートルに達する。樹皮はほとんど平滑で灰色。葉は互生し、偶数羽状複葉で長さ15~30センチメートル。小葉は10対ほどあり、長楕円(ちょうだえん)形で長さ5~7センチメートル。7~10月、枝先に大形の円錐(えんすい)花序をつくり、径約2センチメートルで芳香のある黄色の5弁花を開く。雄しべは7本で2本は長く、上方に退化した雄しべが3本ある。果実は扁平(へんぺい)でまっすぐな莢(さや)になり、長さ20~30センチメートル、幅約2センチメートル、ビロード状の毛がある。中に扁平な円形の種子が15~30個ある。インドから東南アジアに広く分布する。
辺材は白色で、空気に触れると黄変する。心材は黒色で、淡色の縞(しま)模様があり、板目には雲紋形、矢筈(やはず)形などの美しい紋様が現れる。また唐木のなかではもっとも重くて堅いといわれ、高級家具、細工物、マンドリンほかの楽器、床柱などに用いる。街路樹や庭木として植栽もされる。
[小林義雄 2019年10月18日]
文化史
江戸時代に材が渡来し、三味線の胴に使用されたことが、『評判記』に記録されている。貝原益軒(かいばらえきけん)は、「諸木の内、最も良材なり……鉄刀木と言う」(『大和本草(やまとほんぞう)』)と評した。心材は非常に堅く、鉄刀木や鉄樹(『物品識名(ぶっぴんしきめい)』)はそれにちなむ。タガヤサンの名を『大言海』は、フィリピンでの呼び名タンブリアンtambulianに基づくかという。同じく材が堅く、羽葉(うよう)をもつマメ科のシタンヤワラバDalbergia balansae Prainをフィリピン北部のイバナグ人はタッガtaggaとよび、また同じくマメ科のタマリンドTamarindus indica L.をインドネシアのスンダ諸島ではタ(ン)ガ(ル)・アサムtangal asemとよび、タガヤサンとの関連が考えられる。
[湯浅浩史 2019年10月18日]