ホンジュラスの首都テグシガルパから北西に約225キロメートルの地点にあるマヤ古典文化の大遺跡。マヤの大祭祀(さいし)センターとしてはもっとも南東に位置し、グアテマラのキリグアとともに、モタグア川流域のマヤ勢力を代表していた。遺跡は、多くの碑石、祭壇の置かれた大広場をはじめとする五つの広場と、それらを囲むピラミッド状の大神殿、神官の住居址(し)などを中心とし、周囲の広い地域にわたって、衛星都市をいくつももっている。中心部の建物のなかでは、1000以上の象形文字を刻んだ階段をもつピラミッドや、オウムの頭の標石をもつ球戯場などが有名であり、大広場に立つ碑石の人物像は、他の遺跡のマヤ彫刻にはみられない柔和な線によって表現されている。コパンは紀元6世紀以後最盛期に入ったが、9世紀初め急速に衰微した。1891年にハーバード大学が初めて調査を開始して以来、各国の調査団による発掘が行われ、最近の調査ではコパンを構成した社会組織の解明に力が注がれている。
[増田義郎]
ホンジュラスにあるマヤ遺跡。モタグア川流域にマヤ芸術様式のひとつコパン様式を生み出し,4世紀から9世紀に最も栄えた都市。遺跡の中心部はアクロポリスと呼ばれる,プラットフォーム・建造物群複合体と五つの広場から成り,無数の石彫が空間を埋めている。丸彫に近い石碑群をはじめ彫刻の多彩さがコパンの特色のひとつである。また,天文暦数の記録の正確さは,アメリカ大陸の先史文化の中では他に類を見ない。
執筆者:大井 邦明
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