日本大百科全書(ニッポニカ) 「コペルニシウム」の意味・わかりやすい解説
コペルニシウム
こぺるにしうむ
copernicium
周期表第12族に属する人工元素の一つ。原子番号112、元素記号Cn。きわめて強い放射能をもち、天然には存在しない。主となる酸化状態は+Ⅳおよび+Ⅱ。1996年、ドイツのダルムシュタット重イオン研究所において、ホフマンSigurd Hofmann(1944― )らは重イオン加速器中で鉛208(208Pb)に亜鉛70(70Zn)を衝突させ、278112(質量数278の112番元素)を経て277112(半減期約1.1ミリ秒でダームスタチウムとなる)が得られることを明らかにし、初めて112番元素の製造に成功した。その後、多くの同位体がつくられたが、もっとも安定なものはCn285で、半減期は29秒でダームスタチウムとなる。2009年、国際純正・応用化学連合(IUPAC:International Union of Pure and Applied Chemistry)と国際純粋・応用物理連合(IUPAP:International Union of Pure and Applied Physics)の共同作業部会(JWP:Joint Working Party)は正式に新元素と認定し、名称をコペルニシウムとした。これはポーランドの天文学者で地動説を唱えたコペルニクスにちなむ。なお、元素記号は初めCpとしたが、ルテチウム(Lu)がかつてカシオペイウムcassiopeium(Cp)とよばれたことがあり、また、有機金属化合物のシクロペンタジエニルcyclopentadienylの記号もCpであることから、Cnが採用された。
[中原勝儼]