各元素の原子の質量を表す値。ただし絶対値がきわめて小さいので、一つの元素の原子をある一定数として基準にとり、すべてそれに対する相対的な値で示す。現在用いられている原子量は、国際純粋・応用物理学連合(IUPAP:International Union of Pure and Applied Physics)と国際純正・応用化学連合(IUPAC:International Union of Pure and Applied Chemistry)が、1962年統一原子量として発表し、国際原子量委員会(ICAW=International Commission on Atomic Weights、現、原子量および同位体存在度委員会CIAAW=Commission on Isotopic Abundances and Atomic Weights)が採用したもので、炭素の同位体のうち、炭素12を基準にとり、これを原子量12.00000としたものである。すなわち炭素原子が6.0221367×1023(アボガドロ定数)個集まれば、その質量は12.01115グラムで、同じく水素、酸素ではそれぞれ1.00797グラム、15.9994グラムである。原子量はつねに精密測定がなされているため、それらの値はCIAAWから2年に一度、新しい値が発表されている。
[中原勝儼]
原子量の概念は、1803年イギリスのJ・ドルトンの原子説によって初めて導入され、1805年に最初の原子量表が発表されている。しかしこの値はあまり正確ではなく、その後スウェーデンのベルツェリウスによってかなり精密な測定が行われ、原子説にいちおうの実験的支持が与えられた。その後も多くの研究、測定が行われたが、つねに原子量、当量、分子量間の混乱があり、1860年に至りイタリアのカニッツァーロによって初めて近代的原子量測定の基礎が築かれた。この間さらに幾多の変遷があり、初めは酸素が多くの化合物をつくることから酸素を基準にとり、酸素の原子量を1あるいは10または100などとしたり、水素を基準にとり1とすることもあったが、19世紀の末に国際原子量委員会がつくられたころから酸素を基準にとり、酸素の原子量を16.00000と定めていた。すなわち、自然界に存在する酸素原子には、酸素16、酸素17、酸素18の3種の同位体があり、それらが一定の割合で混合している。この三つの同位体の混合しているものを平均し、16.00000を平均相対質量としたものを化学では用い、これを化学的原子量としていた。これに対し、酸素16を16.00000としたものを物理的原子量としていた。物理的原子量と化学的原子量の比は1.000272±0.000005で、無視しても差し支えなかった。しかし精密な研究が進むにつれ、不合理さと不便さがしだいに明らかになり、統一原子量が物理学および化学の両国際連合によって採用されることになった。
[中原勝儼]
元素の原子の質量を一定の基準によって定めた数値。天然の元素は通常同位体の混合物であることが多いが,特殊な場合を除いてその存在比がつねにほとんど一定であることから,それらの加重平均質量をその元素に固有の原子量として定めることができる。この値は,自然界における諸現象,化学反応における相互作用の質量比,モル比(量比),結合比等の決定,定量的解釈にきわめて重要かつ最も基本的な意味をもつ値となる。現在用いられている原子量の基準は1962年に定められたもので,質量数12の炭素の同位体12Cの原子量を正確に12とする基準によって各元素の原子量を定めている。すなわち,正確に12gの12Cの中に含まれる原子の数(アボガドロ数)と同数のある元素の原子の集団(1mol)の質量をグラム単位で示した数値を,その元素の原子量と定義する。この基準が定められるまでは,天然の酸素(同位体16O,17O,18Oの混合物)の平均相対質量を16.0000とする化学的原子量と,16Oの相対質量を16.00000とする物理的原子量とが併用され,両者の比1:1.000272に起因する種々の混乱や誤りの原因を生じていたが,新基準の採用によってその混乱はまったくなくなった。新基準による原子量の従来の化学的原子量との比は1:1.000043にすぎない。原子量は,種々の化合物の分子量や同位体の質量および存在比の測定等をもとにして正確に求められ,測定法の進歩とともにその精度は年々高くなっている。現在は,国際的に採用決定された国際原子量が用いられる。19世紀末,アメリカ化学会,次いでドイツ化学会によってその値の発表が行われ,1919年に〈国際純正応用化学連合(IUPAC)〉が組織されて以来,その下部機構としての国際原子量委員会による討議決定にもとづく国際原子量が毎年公示されており,最近では同位体比のゆらぎ,測定精度のばらつきによる数値の誤差に対する詳細な配慮にもとづく注釈がつぎつぎ加えられるようになった。
執筆者:藤本 昌利
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