コマイ(読み)こまい(英語表記)saffron cod

日本大百科全書(ニッポニカ) 「コマイ」の意味・わかりやすい解説

コマイ
こまい / 粉馬以
氷魚
氷下魚
saffron cod
Pacific saffron cod
Wachna cod
Far eastern navaga
[学] Eleginus gracilis

硬骨魚綱タラ目タラ科に属する海水魚。カンカイ、オオマイ(体長25センチメートル以上)ともよばれる。コマイはカンカイとともにアイヌ語に由来するといわれているが、その意味は不明である。北太平洋沿岸域に広く分布する。日本では北海道周辺海域、太平洋側では茨城県まで、日本海側では山口県までの沿岸。そのほかに、アジア側では朝鮮半島東岸以北の日本海、オホーツク海、ベーリング海に、アメリカ側ではワシントン州のピュージェット湾沖以北、ベーリング海峡を越えてチュクチ湾、シベリア海などに至る。近縁マダラスケトウダラと同じく背びれ3基、臀(しり)びれ2基であるが、小形でやせ形であること、下顎(かがく)のひげが短く瞳孔(どうこう)径程度であること、ひげの根元は黒くないこと、体の側面の斑紋(はんもん)がはっきりとしないことなどで区別できる。沿岸域の底層に生息し、水深5メートルぐらい(冬期)から、150メートルぐらい(夏期)までの間を季節的に移動する。周年汽水湖にすむものもいるが、多くは秋に湖内に入り、春に湖外へ出る。1~3月(多くは1月中~下旬)に岸近くの氷の下の0℃近くの水温の中で弱粘着性の沈性卵を産む。孵化仔魚(ふかしぎょ)の体長は約5ミリメートル。1年で20センチメートル、2年で25~30センチメートルになって成熟する。最大で全長55センチメートルぐらいになる。おもにオキアミ類、エビ類などの小形甲殻類、ゴカイ類、魚類などを食べる。漁期初秋冬季の2回で、機船底引網でかなり多量に漁獲される。とくに結氷期のコマイ漁は有名で、氷に穴をあけ、氷下に寄せてくる産卵群を小型定置網、氷下待ち網、手釣りでとることから氷魚あるいは氷下魚と書く。肉は白身で淡泊で、鍋物に用いられるが、鮮魚を凍らせたまま刺身にしたルイベ、腹わたをとって丸干しにした塩乾加工品が好評である。

[岡村 收・尼岡邦夫 2015年11月17日]


出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

改訂新版 世界大百科事典 「コマイ」の意味・わかりやすい解説

コマイ (氷魚/氷下魚)
saffron cod
Eleginus gracilis

タラ目タラ科の海産魚。日本海および北洋に広く分布し,南限は韓国の仁川,アメリカ合衆国のピュージェット・サウンド。体型はマダラに似ているが,頭部も体も細い。体色は背部が黄褐色で不規則な暗褐色の斑紋がある。腹側は銀白色。下あごは上あごより短く,ひげがある。背びれは3基,しりびれは2基。全長30cm程度。北海道の北東部に多く,厚岸湾では秋に釣るが,根室湾では1~3月ころ海面や汽水湖面が一面に結氷したとき,その下に集まってくる産卵群を氷に穴をあけて定置や手釣りで漁獲する。塩干品として食用にする。
執筆者:


出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

百科事典マイペディア 「コマイ」の意味・わかりやすい解説

コマイ

タラ科の魚。マダラに似るが小さく,全長30cm程度。背面は褐灰色で不規則な斑紋がある。日本海と北太平洋に分布。根室・厚岸地方では冬季,氷を割って,その穴から釣る。塩干品か練製品の原料にする。
→関連項目タラ(鱈)

出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報

栄養・生化学辞典 「コマイ」の解説

コマイ

 [Eleginus gracilis].タラ科の海産魚.25cm以上になる.食用魚.

出典 朝倉書店栄養・生化学辞典について 情報

今日のキーワード

世界の電気自動車市場

米テスラと低価格EVでシェアを広げる中国大手、比亜迪(BYD)が激しいトップ争いを繰り広げている。英調査会社グローバルデータによると、2023年の世界販売台数は約978万7千台。ガソリン車などを含む...

世界の電気自動車市場の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android