コルチカム(読み)こるちかむ

日本大百科全書(ニッポニカ) 「コルチカム」の意味・わかりやすい解説

コルチカム
こるちかむ
[学] Colchicum

ユリ科(APG分類:イヌサフラン科)コルチカム属の総称。ヨーロッパ、西アジアに約60種分布する。交雑によって多くの園芸品種がつくりだされている。よく知られているのはイヌサフランC. autumnale L.で、ヨーロッパおよび北アメリカ原産の球根草。薬用または観賞用に栽培される。球根は卵形、径3~5センチメートルで、褐色の外皮に覆われる。9~10月、葉が出る前に高さ約15センチメートルの花茎を伸ばし、淡紫紅色の6弁花で、サフランに似た花を開く。葉は翌春に出て、夏に枯れる。球根は花期後翌年の秋までと出葉期を除き休眠する。繁殖は分球により、9月上・中旬が植え付け適期である。きわめてじょうぶで、球根を室内に放置しておくだけでも、開花期になると花を開く。球根にはアルカロイドの一種コルヒチンが含まれ、元来は有毒であるが、少量を用いて痛風の薬とされてきた。コルヒチンはまた植物の染色体を倍加させる作用があり、種なしスイカなど園芸植物の育種上で重要な物質となっている。

[平城好明 2018年11月19日]

文化史

属名のコルキクム(コルチカム)は、「コルキスの」という意味のギリシア語kolchikonに由来し、黒海東部にあった古代のコルキス地方にみられたことから名づけられた。ギリシアのディオスコリデスは、コルチカムを毒キノコと同じく有毒植物に扱ったが、17世紀からは球根が、さらに19世紀以降には種子が薬用にされた。1937年にアメリカの植物学者A・F・ブレークスリーが発表したコルヒチンによる倍数体の作出は、植物育種の新たな道を開いた。

[湯浅浩史 2018年11月19日]


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コルチカム

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