改訂新版 世界大百科事典 「コンスラード」の意味・わかりやすい解説
コンスラード
consulado
スペインおよびスペイン領新大陸植民地に設立された商人ギルド組織。1494年にブルゴスの商人が羊毛取引とフランドルとの貿易独占を目的として設立して以来,スペインではビルバオ(1511),セビリャ(1539),マドリード(1632)に順次設立され,18世紀末には14を数えた。新大陸では1594年に初めてメキシコ市に設立され,1613年設立のリマのコンスラードとともに,新大陸の商業を独占した。その後18世紀末にはブルボン王朝による商業改革を通じて,ブエノス・アイレス,カラカス,ハバナ,カルタヘナ,ベラクルス,サンチアゴ(チリ)にも設立された。各コンスラードは王権に承認された独自の法規にもとづいて,商取引の統制,成員間の相互扶助,港の管理,航海者の養成等を行ったほか,王権から税関業務を委託される場合もあった。またセビリャのコンスラードは,1539-89年と1651-62年にわたり,王権より新大陸との奴隷貿易の独占権を付与された。こうした商人の相互扶助,商業独占権の維持機関としての機能とならんで,コンスラードには商取引上の紛争を処理するための下級裁判権も認められていた。この法廷としての組織をコンスラードと呼び,利益集団としてのコンスラードをウニベルシダードuniversidadと呼んで区別する場合もある。構成員には商人に加え航海者が含まれる場合が多く,成員からプリオールpriorまたはフィエルfielと呼ばれる統括者1名とコンスルcónsulと呼ばれる数名の執行委員が選出された。役職者の任期は2年間で,30歳以上の既婚のスペイン人で一定以上の財産を有し小売店を経営していないことが条件とされた。なお植民地のコンスラードの場合,裁定に不満がある際には最高司法・行政機関アウディエンシアの聴訴官へ上訴する道が開かれていた。一般にコンスラードは自律性をもった特権商人の排他的利益集団であり,特に植民地の場合は,カビルド(市参事会)とならんで,植民地生れの白人にとって,数少ない利権確保の場でもあった。
→ラテン・アメリカ[歴史]
執筆者:清水 透
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報