ごま葉枯病(読み)ごまはがれびょう

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ごま葉枯病」の意味・わかりやすい解説

ごま葉枯病
ごまはがれびょう

イネおよびトウモロコシ病気。イネごま葉枯病はイネの重要な病気の一つで、コクリオボルス・ミヤベアヌスCochliobolus miyabeanusという子嚢菌(しのうきん)の寄生によっておこる。おもに葉に褐色ないし濃褐色の楕円(だえん)形の小さい斑点(はんてん)ができる。斑点の大きさは普通長さ2~3ミリメートルで、ゴマ粒をちりばめたような病徴を示すのでこの名がある。ひどく発生して多くの病斑ができた葉はまもなく枯れる。また、節、穂首、もみなども侵される。穂首は褐色になり実入りが悪くなる。もみでは褐色の斑点ができ、のちに黒色病原菌胞子)が煤(すす)状に形成される。病原菌は被害藁(わら)やもみについて冬を越し、翌年これから広がる。砂質土、泥炭地などや秋落ち水田で発生が多く、また、肥料とくにカリが不足すると発生が多くなる。客土、種もみの消毒堆肥(たいひ)などの有機質肥料やカリ肥料の十分な施用によって防除する。

 トウモロコシごま葉枯病はイネごま葉枯病に似た病徴で葉に小さい褐色の斑点ができる。病原菌も同じ属の糸状菌である。もともとそれほど重要な病気ではなかったが、1970年(昭和45)アメリカ雄性不稔(ふねん)細胞質をもった一代雑種品種で大発生し有名になった病気である。

[梶原敏宏]


出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

飼料作物病害図鑑 「ごま葉枯病」の解説

ごま葉枯病(トウモロコシ)

最も重要な糸状菌病。梅雨明け頃から発生が始まり、葉および葉鞘にオレンジ色〜黄褐色楕円形、長さ0.5〜2cm、幅2〜5mm程度の病斑を多数形成する。多発した場合は植物全体が枯れ上がる。8月から9月にかけて発生が増加する生育後期の病害。病原菌は分生胞子が風雨で飛散して、まん延する。レースはトウモロコシの雄性不稔細胞質の型に応じて存在し、日本ではレースOが発生している。

ごま葉枯病(パールミレット・ネピアグラス)

葉および葉鞘に発生する糸状菌病。病斑は褐色から赤褐色、楕円形から長楕円形、大きさ1-5×0.5-2cmになる。病斑内部はしばしば輪紋状になり、病斑周囲は黄色になる。後に病斑は相互に融合して不定形になり、葉枯を生じる。病原菌はB. sacchariだが、別種(Bipolaris sp.)も病原となる。

ごま葉枯病(テオシント)

葉および葉鞘に発生する糸状菌病。病斑は黄褐色から褐色で、長楕円形から長紡錘形または短線形、大きさ3ー20×1ー5mmになる。病斑周縁部は褐色になり、周囲との境界は明瞭である。後に病斑は相互に融合して不定形になり、葉枯を生じる。

ごま葉枯病(ギニアグラス)

沖縄県名護市および今帰仁村で発生。ハイキビ(Panicum repens L.)およびオヒシバにも発生する。病斑は黄褐色〜赤色の短条斑,小斑点ないし楕円斑で,草種によっては激発する。

出典 畜産草地研究所飼料作物病害図鑑について 情報

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ごま葉枯病」の意味・わかりやすい解説

ごま葉枯病
ごまはがれびょう
brown spot

複斑病とも呼ばれる。糸状菌の一種の子嚢菌に属する菌類による,植物の伝染性の病害。おもにとうもろこし,粟,稲などに寄生,発病する。葉を中心に葉鞘,苞葉などに紡錘形,楕円形の斑点を生じる。この病斑が合さって下葉から枯れ上がる。温暖地では特に発生率が高く,最重要作物病害とされる。

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報

百科事典マイペディア 「ごま葉枯病」の意味・わかりやすい解説

ごま葉枯病【ごまはがれびょう】

子嚢菌(しのうきん)類コクリオボーラス属の菌類によって引き起こされるイネ,トウモロコシ,アワの重要な病気。葉にごま状の黒色病斑を生じ,後に枯死する。

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