翻訳|cyclic AMP
環状AMPともいう。cAMPと略す。アデノシンのリボースの3'-ヒドロキシ基と5'-ヒドロキシ基に1分子のリン酸がジエステルとして結合した化合物であり、生物界でさまざまな調節現象に関与している重要な物質である。動物の体内でグリコーゲンを分解してグルコースをつくる必要が生じると、グルカゴンやエピネフリンなどのホルモンが血中に放出される。これらのホルモンが肝臓などの細胞膜の外側に結合すると、膜の内側でcAMPがつくられ、これがグリコーゲン代謝系の酵素を活性化する。このようにホルモンは細胞表面までの第一の伝令物質であり、細胞内部では第二の伝令物質cAMPが働くことになる。そこでcAMPはセカンドメッセンジャーともよばれる。このような現象は1956年にアメリカのE・W・サザランドらが明らかにした。その後、他のホルモンについても、cAMPがセカンドメッセンジャーとなっている例がいくつも発見された。動物以外の生物でも、大腸菌では遺伝子の機能発現を促進したり、細胞性粘菌という菌の単細胞が、生活環のある時期に集合するための信号物質となっていることなどが発見されている。今後、さらにさまざまな生命現象のなかで、重要な役割を果たしている例が知られるであろう。cAMPは細胞内に初めから存在しているのではなく、ホルモンなどの刺激によりアデニレートシクラーゼという酵素が活性化されることにより、ATP(アデノシン三リン酸)からつくられる。
[笠井献一]
adenosine cyclic 3′,5′-monophosphate.C10H12N5O6P(329.21).バクテリアからほ乳動物まで,広く生物界に存在する環状のモノヌクレオチド.生体内では,アデニルサイクレースの作用により,ATPから合成され,ホスホジエステラーゼの作用によりAMPに分解される.融点219~200 ℃.-43°(水).λmax 258 nm(ε 1.47×104,pH 7),λmax 256 nm(ε 1.45×104,pH 2).生体組織中の濃度は,10-6~10-7 mol L-1 程度にすぎず,ATPのようにエネルギー源として利用されているのではなく,一種の化学シグナルとしてはたらいている.図のような,ホルモン作用のセカンドメッセンジャーとしての役割が,もっともよく知られている.多くの場合,ホルモンが細胞膜上の受容体に結合すると,膜に存在するアデニルサイクレースが活性化される.この結果,細胞内のサイクリックAMP(cAMP)のレベルが上昇し,細胞内の特定の酵素が活性化され,生理的応答が起こる.LD50 1.4 g/kg(ラット,経口)[CAS 60-92-4]
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
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…(化学式)サイクリックAMPともいう。cAMPと略記する。…
※「サイクリックAMP」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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