サクソグラマティクス(英語表記)Saxo Grammaticus

改訂新版 世界大百科事典 「サクソグラマティクス」の意味・わかりやすい解説

サクソ・グラマティクス
Saxo Grammaticus
生没年:1150ころ-1220

デンマークの歴史家。フランスに学んだのちデンマークの大司教アブサロン秘書になる。大司教の依頼で彼がラテン語で書いた《デンマーク人の事績Gesta Danorum》は伝説的な先史時代から1185年のウェンド人屈服までを扱う16巻からなる。その伝説時代の部分は北欧神話英雄伝説(ハムレット伝説など)の宝庫であり,また歴史時代の部分は当時の政治法律経済宗教民俗などの研究にかけがえのない資料を提供している。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「サクソグラマティクス」の意味・わかりやすい解説

サクソ・グラマティクス
さくそぐらまてぃくす
Saxo Grammaticus
(1150ころ―1220ころ)

デンマークの歴史家。シェラン島出身。ルンド大司教アブサロンの書記として、彼の要請で大著『ゲスタ・ダノールム』Gesta Danorumデーン人の事績)を書き始め、バルデマー2世とアブサロンの後継者アナース・スーネセン大司教に献呈した。ラテン語に精通し、古典文学に博学であることからみて、フランスに滞在し、ここで当時の学問的教養を身につけた可能性が強い。『ゲスタ・ダノールム』は16書からなり、1書から9書ではデンマークのゴルム老王に至る神話、伝説時代を、10書以降ではハラール青歯王からクヌード6世の1185年までを取り扱い、同時代人スベン・アッゲセンの『デンマーク王国略史』とともに貴重な文献史料となっている。名文家を意味するあだ名「グラマティクス」は、14世紀の年代記に最初に現れるが、広く知られるようになるのは16世紀以降である。

[牧野正憲]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「サクソグラマティクス」の意味・わかりやすい解説

サクソ・グラマティクス
Saxo Grammaticus

12世紀中頃から 13世紀初頭のデンマークの歴史家。姓は不明,「グラマティクス」は,すぐれたラテン語の文章を書いたために「文法家」と呼ばれたのが通称となったもの。コペンハーゲン港を開いた大司教アブサロン (1128~1201) の書記をつとめ,そのすすめで『デンマーク人の事跡』 Gesta Danorumをラテン語で書いたことで知られる。これは伝説上のダーン王の時代から 1185年のカヌート6世によるポメラニア地方の征服までの歴史を扱った 16巻の大著で,ことにデンマーク建国の事情をはじめ,ハムレット王子の話その他を記した第9巻までが,北欧の神話伝説の宝庫をなしている。

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世界大百科事典(旧版)内のサクソグラマティクスの言及

【デンマーク】より

…ガーナ,タンザニア,インドといった発展途上国にもこれをモデルとしたものができている。
【文化】

[文学]
 現存最古の作品は,キリスト教聖職者による教化作品を別にすれば,サクソ・グラマティクスの《デーン人(デンマーク人)の事績》である。これは伝説時代から1185年までのデンマーク王朝史で,ラテン語による男性的な民族文学と特徴づけられるが,その中には古代デンマークの英雄詩作(〈ビャルケのうた〉等)がかなりラテン語で再現されている。…

【ハムレット】より

…1601年ころ作,02年ころ初演。原話は北欧の民話で,12世紀のデンマークの史家サクソ・グラマティクスが書き記したものを基にしたフランス語の物語をシェークスピアが読んだ節はあるが,直接下敷きになったのは,1580年代末にロンドンで上演されて人気を呼んだ作者不詳の劇(《原ハムレット》と呼びならわされる。作者はT.キッドという説もある)であったと想像される。…

※「サクソグラマティクス」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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