日本大百科全書(ニッポニカ) 「サフロ鉱」の意味・わかりやすい解説
サフロ鉱
さふろこう
safflorite
コバルト(Co)および鉄(Fe)の二砒(ひ)化物。砒鉄鉱系。単にコバルトの二砒化物(化学式CoAs2)とする見解もあるが、これに近い相としては単斜晶系の斜サフロ鉱clinosaffloriteが対応しているので、鉄も主成分に加えられている。自形はb軸方向に伸びた菱(りょう)柱状で、先端部はとがる。また大きな庇面(ひめん)の発達した多角形の断面をもつ柱状となることもある。
深熱水性鉱脈型ニッケル、コバルト、銀鉱床から産する。日本では変成層状マンガン鉱床中の比較的低品位のマンガン鉱石中から知られ、岩手県九戸(くのへ)郡野田(のだ)村野田玉川鉱山(閉山)に産したことが知られている。共存鉱物はスクッテルド鉱skutterudite(化学式(Co,Ni)As3)、ランメルスベルグ鉱rammelsbergite(化学式NiAs2)、紅砒ニッケル鉱、自然銀、自然蒼鉛(そうえん)、砒鉄鉱など。同定は他の砒鉄鉱系鉱物との識別は困難であるが、錫白色(すずはくしょく)の外観と比較的錆(さ)びやすい性質、大きな比重などが決め手となる。英名はこの鉱物から抽出されたコバルト化合物が紅花safflower色の顔料として用いられたことに由来する。
[加藤 昭 2016年9月16日]