ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「サマランチ」の意味・わかりやすい解説
サマランチ
Samaranch, Juan António, marquis de Samaranch
[没]2010.4.21. バルセロナ
第7代国際オリンピック委員会 IOC会長。バルセロナの裕福な織物業者の家に生まれ,地元の高等経営学院に学ぶ。企業に勤めたのち市政に携わり,1966年 IOC委員に就任。1977~80年ソビエト連邦駐在大使を務め,1980年モスクワで開かれた IOC総会で会長選挙に当選した。冷戦下の 1980年モスクワ・オリンピック競技大会,1984年ロサンゼルス・オリンピック競技大会で東西陣営相互のボイコットにゆれるなか,IOC自体が国際政治のなかに根を張り,ステータスを高めることが重要との考えに立ち,全世界の国内オリンピック委員会 NOCを飛び回り,先進国を中心とする各国の政治指導者にオリンピック競技大会への支持と協力を求めた。一方,ロサンゼルス大会がかつてない活発な民間資金の調達により財政的に大成功したのをうけ,北米,ヨーロッパ,日本に対するテレビ放映権料を引き上げ,業種を限定しつつ国際的大企業を IOCスポンサーとして取り込むなど財源確保に努めた。アマチュア規程がすでにオリンピック憲章から削除されていたこともあって,プロフェッショナルの選手にオリンピック参加を呼びかけ,オリンピックを「最高の選手による最高の大会」となったと宣言した。オリンピック競技種目にテニスを復活させたほか,卓球,野球,ビーチバレーボール,マウンテンバイク,トライアスロンなどを次々と採用,商業主義路線の推進によりオリンピックの規模を拡大した。2001年退任したが,終身名誉会長として活動した。オリンピックを社会的に最も重要なイベントの一つとした功績から,創設者ピエール・ド・クーベルタンに次ぐ IOC発展の貢献者と評する関係者も多い。1992年候爵に叙された。
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報