日本大百科全書(ニッポニカ) 「サリナス」の意味・わかりやすい解説
サリナス
さりなす
Pedro Salinas
(1892―1951)
スペインの詩人、文学者。マドリード生まれ。国内および英仏の大学で文学を講じる。内戦を契機にアメリカに渡り、ボストンで没した。『前兆』(1923)など純粋詩の時代から代表作『君に負いし歌』(1933)、『愛の条理』(1936)に至る一貫した愛のテーマ、繊細な感覚によって愛の詩人とうたわれる。サリナスは詩に真実と美、さらに知性を求めた。彼の詩が一見平易のようで、ときに「内的奇知主義」とよばれる理由がここにある。そのほか『すべてはより明らかに』(1949)、『信頼』(1955。没後刊)などの晩年の作品は、現代の不安感を反映している。学者としても卓越し、おもに詩人に関する優れた研究を残している。
[有本紀明]
『『世界名詩集大成14 南欧・南米篇』(1960・平凡社)』