ザクロソウ(その他表記)Mollugo stricta L.

改訂新版 世界大百科事典 「ザクロソウ」の意味・わかりやすい解説

ザクロソウ
Mollugo stricta L.

人里畑地路傍に普通な,ザクロソウ科の夏緑一年生雑草。朝鮮,中国,マレーシア,インドなどアジアの温帯~熱帯に広く分布し,日本では本州~九州に産する。全体に無毛。茎は褐色をおび,繊細でよく分枝し,高さ10~20cm。光沢のある倒披針形の葉が3~5枚輪生する。7~10月にかけ,黄褐色の細かい花が,枝先に花序をなして多数つき,果実は球形蒴果(さくか)となる。葉や果実のようすが,ザクロをほうふつとさせるところからザクロソウという。中国では全草を,腹痛や下痢の薬とする。クルマバザクロソウM.verticillata L.(英名carpetweed/Indian chickweed)は,熱帯アメリカ原産の一年生帰化植物。4~7枚の葉が輪生し,花が葉腋(ようえき)につく点がザクロソウと異なる。

 ザクロソウ科Molluginaceaeは,分布の中心がアフリカにある14属95種の小さな科で,ツルナ科に合一する見解もある。離弁花で,花弁萼片が分化せず,花被片は4~5枚。多くは多数のおしべをもつ。めしべ子房上位。2~5枚の心皮が離生するかわずかに合着し,ヤマゴボウ科とともにナデシコ目の中では原始的な科とみられる。
執筆者:


出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ザクロソウ」の意味・わかりやすい解説

ザクロソウ
ざくろそう / 石榴草
[学] Mollugo stricta L.

ザクロソウ科(APG分類:ザクロソウ科)の一年草。全草無毛。高さ10~30センチメートル。茎は細く稜(りょう)があり褐緑色、著しく枝分れして斜上または散開する。葉は倒披針(とうひしん)形で長さ1.6~4.5センチメートル、下方のものは3~5枚が輪生し、上方のものはやや小形で、対生するものもある。7~10月、まばらな集散花序をつけ、黄緑色花を開く。包葉は小さく、膜質、花被片(かひへん)は5枚で楕円(だえん)形、長さ1.8ミリメートル、雄しべは3~5本。蒴果(さくか)は球形で径約2ミリメートル、種子は径約0.5ミリメートルで微細な点状の突起がある。本州から九州、および朝鮮半島、中国、マレー、インドに分布する。名は、葉がザクロに似ることによる。Trigastrotheca属とすることもある。同属の植物で南アメリカ原産の帰化種であるクルマバザクロソウM. verticillata L.は、葉が4~7枚輪生する。

[小林純子 2021年2月17日]


出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ザクロソウ」の意味・わかりやすい解説

ザクロソウ(石榴草)
ザクロソウ
Mollugo stricta

ザクロソウ科の一年草で,東南アジアに広く分布する。日本全土の畑地や路傍などに生える最も普通な雑草である。茎は根もとから多数分枝し四方に広がり,高さ 10~20cmになる。葉は長さ2~3cmの披針形で3~5枚ずつ輪生状につく。夏から秋にかけて,枝先に多数の黄褐色の小花をつける。小さな萼片が5枚あり花弁はない。花後に径 2mmほどの球形の 蒴果をつけ,多数の種子を生じる。

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報

今日のキーワード

カイロス

宇宙事業会社スペースワンが開発した小型ロケット。固体燃料の3段式で、和歌山県串本町の民間発射場「スペースポート紀伊」から打ち上げる。同社は契約から打ち上げまでの期間で世界最短を目指すとし、将来的には...

カイロスの用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android