改訂新版 世界大百科事典 「ザミーンダーリー制度」の意味・わかりやすい解説
ザミーンダーリー制度 (ザミーンダーリーせいど)
Zamīndārī System
1793年コーンウォリス総督によってベンガル管区に導入され,以後イギリス支配期を通じて北インドを中心に実施された土地所有・徴税制度。〈永代ザミーンダーリー(地税)制度〉とも呼ばれる。〈ザミーンダールZamīndār〉とは,ペルシア語のザミーンzamīn(土地)とダールdār(所有者)の合成語で,土地保有者一般を意味したが,本来,イギリス支配以前に存在していたヒンドゥー領主層,村落の小地主層,またムガル時代に土着化していったムスリム(イスラム教徒)豪族層など多様な在地支配層が含まれていた。しかし,イギリス東インド会社は最大の地税収入を確保すべく本制度を生み出した。
その骨子は,(1)旧来の各種領主・地主層を一括して〈地主〉と規定,(2)地主の実態いかんにかかわらず,法の規定によって独占的な地主的所有権を承認する,(3)会社は個々の地主と地税徴収の契約を結ぶ,(4)地税額は永代に固定され,開墾・土地改良などによる土地の価値変動を考慮しない,というものであった。土地は競売によって最高の入札者に入手された。その結果,土地が投機的対象となり,高利貸や商人の〈地主〉も生まれ,在来の領主・地主層の中には没落する者も続出した。さらに,各種の耕作農民,土地保有権を持つ農民は本制度の下では単なる小作人となり,領主や地主と各層の農民とを結ぶ農村内での伝統的関係もこわれ,再生産が困難になるという状況も生じた。この制度に対する批判が,後に南インドで施行されることになったライーヤトワーリー制度導入の一契機となった。
執筆者:重松 伸司
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報