システムダイナミクス(その他表記)system dynamics

改訂新版 世界大百科事典 「システムダイナミクス」の意味・わかりやすい解説

システムダイナミクス
system dynamics

略称SD。変動するシステムのシミュレーションモデルシミュレーション)によって,そのシステムの,時間経過につれて変わる特性を明らかにしようとする方法をいう。

1956年アメリカのフォレスターJay W.Forresterにより創案された。時間につれて変わる企業の性質研究するために考えられたので,初めはインダストリアルダイナミクス(IDと略称)と呼ばれ,いろいろの特徴をもっていたため,当時著しい注目を集めた。フォレスターはこの方法を各種のシステムに適用し,都市問題を扱った《アーバンダイナミクス》(1969。UDと略称),世界を一つのシステムとして扱った《ワールドダイナミクス》(1971。WDと略称)を世に問うたが,いずれも著しい反響をよんだ。ローマ・クラブがフォレスターの弟子のメドーズDennis L.Meadowsを主査とするチームに委託した研究の報告が《成長の限界》(1972)として出版されたが,本書はSD紹介の役目も果たしている。他に健康医療問題を扱うヘルスダイナミクス(HDと略称),国家モデルを扱うナショナルダイナミクス(NDと略称)等が研究されており,これらを総称してシステムダイナミクスという。日本へ紹介されたのはインダストリアルダイナミクス(1963)が最初である。日本でもID,UD,HD等が利用され,特にUDの利用例はアメリカについで多い。SDモデルのためにDYNAMOダイナモ)とよばれるシミュレーション言語が開発されており,マイコン用の簡易DYNAMOも実用化されている。

組織内に蓄積される量をSDではレベルといい,レベル間を単位期間内に流れる量をレートという。問題とするシステム内にまずレベル量とそのレベルに出入するレートを選定,それらのレベル,レートを関係づける補助の変数を考え,これらの量をSD特有の記号で結ぶ流れ図により変数間の関係をDYNAMOの式になおすと,SDモデルが得られる。SDには次のような長所がある。(1)フィードバックループの解析が容易である。(2)複雑な方程式を扱うのが容易である。(3)社会現象には一度しか起こらないことが多いが,SDはこのような現象も扱うことができる。(4)長期の計算に適する。他方,批判される点も多い。(1)根拠となる理論が少ない。(2)あいまいな関係を使いすぎる。(3)モデルが適正かどうかを検証することが難しい。新しい方法の発展段階に不十分な点があるのはさけられないことで,SDを改善する研究が活発に行われている。
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

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