シットウェル(読み)しっとうぇる(その他表記)Edith Sitwell

デジタル大辞泉 「シットウェル」の意味・読み・例文・類語

シットウェル(Sitwell)

(Edith ~)[1887~1964]英国の女流詩人。弟らとともに詩の革新運動を展開。音楽のリズムを詩に生かした高踏的詩風で有名。作「ファサード」「黄金海岸の慣習」など。
(Osbert ~)[1892~1969]英国の詩人・小説家。の弟。辛辣しんらつ風刺特色とする。
(Sacheverell ~)[1897~1988]英国の詩人・美術評論家の弟。三姉弟のなかで、詩風はもっとも伝統的。

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精選版 日本国語大辞典 「シットウェル」の意味・読み・例文・類語

シットウェル

  1. ( Edith Sitwell エディス━ ) イギリスの女流詩人。現代の沈痛な現実に根ざした感覚を、繊細な技法でうたいあげた、現代イギリス詩を代表する詩人の一人。主作品に「バラの詠唱」。(一八八七‐一九六四

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「シットウェル」の意味・わかりやすい解説

シットウェル(Edith Sitwell)
しっとうぇる
Edith Sitwell
(1887―1964)

イギリスの女流詩人。ヨークシャースカーバラ生まれ。オズバート、サシェベレル兄弟の姉。1916年、年刊の詩選集『車輪』(~1921)を創刊、その詩誌に拠(よ)って、弟らと詩壇に斬新(ざんしん)、華麗、そして高踏的な新風をもたらし、1918年に発表した詩集『道化(どうけ)らの家』の成功で詩人としての地歩を固めた。以降『正面』(1922)、『田園の喜劇』(1923)と詩集を世に問うたが、実験的な新奇な視点からのイメージと繊細な詩句の響き、そして古い貴族の家柄の生まれにふさわしい洗練された高雅な気品も相まって、一時彼女の自作詩の朗読会はセンセーションを巻き起こした。しかし、1929年の『黄金海岸奇習』の風刺的な長編詩の発表あたりからようやく詩風の変化が認められ、現代社会批判の姿勢を強め、予言者風の格調を帯びるに至る。とくに第二次世界大戦中には宗教色の濃い作品を数多く書いたが、なかでも、ドイツ空軍によるロンドン空襲に材をとった「なおも雨が降る」の詩編は彼女の最上の作品の一つとして有名。ほかに「原子時代の三詩編」(1949)も忘れがたい。

沢崎順之助

『酒井善孝訳『世界名詩集大成10 正面・街のうた・原子時代の三部作』(1959・平凡社)』


シットウェル(Sir Osbert Sitwell)
しっとうぇる
Sir Osbert Sitwell
(1892―1969)

イギリスの詩人、小説家。シットウェル三姉弟の一人として知られる。代表作に同題の哲学的長編詩を含む編詩『アルゴノートとジャガノート』(1919)があり、戦争や人間の性格を題材に辛辣(しんらつ)な風刺を加えるのを特色とする。小説、戯曲、随筆、評論など文筆活動は多岐にわたったが、とくに5巻にわたる自叙伝(1944~1950)はシットウェル一族の生活を如実に描いたものとして優れている。

[沢崎順之助]


シットウェル(Sacheverell Sitwell)
しっとうぇる
Sacheverell Sitwell
(1897―1988)

イギリスの詩人、美術評論家。シットウェル三姉弟の末弟。自由詩を唱道した姉・兄と比較して、おとなしい古典的詩風をとる。代表的詩集は『百一人の道化(どうけ)』(1922)、『ダン博士とガルガンチュア』(1930)、『聖愛と俗愛』(1940)などがある。美術に関心が深く、とくにバロック期の美術について多くの評論をものし、また美術愛好者としての視点にたつ紀行談もある。

[沢崎順之助]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「シットウェル」の意味・わかりやすい解説

シットウェル
Sitwell, Dame Edith

[生]1887.9.7. ヨークシャー,スカーバラ
[没]1964.12.9. ロンドン
イギリスの女流詩人。名門に生れたが,幼時から反骨精神に富み,年刊詩集『輪』 The Wheels (1916~21) を主宰し弟のオズバート,サシェバレルらとともに伝統詩に反抗した。ことに言語の音楽性を強調する初期の詩論とその実践──詩集『正面』 Façade (22) とその朗読会 (23) ──は詩壇に大きな反響を呼んだ。『眠れる美女』 The Sleeping Beauty (24) などののち,『黄金海岸の奇習』 Gold Coast Customs (29) の頃から文明批評的要素が加わり,それは『街の歌』 Street Songs (42) ,『緑の歌』 Green Song (44) ,『冷気の歌』 Song of the Cold (45) などで発展したが,これに宗教的要素が徐々に加わってきた。原爆の詩3編を含む『薔薇の歌』 The Canticle of the Rose (49) にそれが特に顕著である。以後庭師天文学者』 Gardeners and Astronomers (53) ,『追放者』 The Outcasts (62) などの詩集があり,散文に『ポープ伝』 Alexander Pope (30) ,『詩人の手帖』A Poet's Notebook (43) ,『シェークスピア覚書』A Notebook on William Shakespeare (48) がある。

シットウェル
Sitwell, Sir Osbert

[生]1892.12.6. ロンドン
[没]1969.5.4. フィレンツェ
イギリスの詩人。姉イーディス,弟サシェバレルとともに『輪』の新詩運動に加わった。イートン校に学び,1912年軍隊に入り第1次世界大戦に従軍したが,19年執筆に専念するため軍籍をひいた。以来その生活は彼自身の言葉に従えば「俗物に対するみずからも傷つく白兵戦の連続」であったが,それは『アルゴ船の勇士とクリシュナ神』 Argonaut and Juggernaut (1919) に始る数多くの風刺詩や,上流社会を批判した『爆撃の前』 Before the Bombardment (26) をはじめとする斬新な形式の小説によるものであった。しかし代表作は5巻の自伝 (45~50) で,記念すべき時代の記録である。

シットウェル
Sitwell, Sir Sacheverell

[生]1897.11.15. ヨークシャー,スカーバラ
[没]1988.10.1. ロンドン
イギリスの詩人,美術批評家。イーディスとオズバートの弟。オックスフォード大学卒業。『南欧バロック芸術』 Southern Baroque Art (1924) をはじめとする数冊の美術史や,物語詩『ダン博士とガルガンチュア』 Doctor Donne and Gargantua (30) などのほかに自伝 (26) ,画家や建築家の評伝,旅行記などがある。 1958年に来日,『錦帯橋』 Bridge of the Brocade Sash (59) という日本印象記を書いた。

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百科事典マイペディア 「シットウェル」の意味・わかりやすい解説

シットウェル

英国の女性詩人,評論家。1915年にボードレール風の詩で出発,1916年―1921年詩誌を主宰,続いて《ファサード》(1922年),《眠れる美女》(1924年),《黄金海岸の風習》(1929年)など,繊細な感覚と色彩に富んだ作品を発表する。戦後に《ばらの賛歌》(1949年),《追放者》(1962年)など。1954年カトリックに改宗。二人の弟Osbert Sitwell〔1892-1969〕,Sacheverell Sitwell〔1897-1988〕も詩人。
→関連項目ウォルトン

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