アイルランドの物理学者。アイルランド南海岸にあるダンガーバンで生まれる。牧師である父のために各地を転々とした。1922年ダブリンのトリニティ・カレッジに入り、数学と物理学の実験科学を専攻した。1926年卒業、翌1927年キャベンディッシュ研究所のE・ラザフォードのもとで仕事をするためにケンブリッジ大学へ行った。
1919年ラザフォードがラジウムから放出されるα(アルファ)粒子を使って窒素の原子核変換をおこさせたのち、天然の放射線源を利用して多くの原子核実験が試みられた。しかし、天然の放射線源は強度が低く、そのエネルギーにも限界があったため、人工的に荷電粒子を高速度に加速する装置(加速器)の開発が望まれた。ウォルトンは、初め間接的な方法で高速荷電粒子を生成する装置の研究を通してこの問題を追究した。コッククロフトと共同してからは、最初300キロボルトに加速した粒子の生成を目標としたが、コンデンサーと整流器を組み合わせた電圧増倍回路の使用によって、約10マイクロアンペアの強度をもつ粒子を約700キロボルトまで加速できた。この直接的な加速方法の装置を使用して1932年リチウム原子核の変換実験に成功した。この業績によりコッククロフトとともに1951年ノーベル物理学賞を受賞した。
[日野川静枝]
イギリスの伝記作者、著述家。スタッフォード生まれ。ロンドンで商人として成功し、また詩人や聖職者と親しく交わり、ジョン・ダン、ジョージ・ハーバート、そのほか3人の伝記を書いた。その際、労をいとわず資料を収集して正確な事実の記録に努め、推敲(すいこう)を重ねて文学としての完成を求めたが、有徳の人をたたえて教訓とする意図があって、古い聖徒伝の伝統から抜けきっていない。世俗の喧噪(けんそう)を離れて自然に親しむことを述べた有名な『釣魚大全(ちょうぎょたいぜん)』(1653)の著者でもある。
[平 善介]
『戸川秋骨著『ウォルトン』(1935、1980・研究社出版)』
イギリスの作曲家。ランカシャーのオールダム生まれ。オックスフォードの聖歌隊学校に学んだが、作曲はほとんど独学といえる。弦楽四重奏曲(1922)、女流詩人イーディス・シットウェルの一連の詩に作曲した朗読とアンサンブルによる『ファサード』(1922)、序曲『ポーツマス・ポイント』(1925)などによって作曲家としての地位を確立。初期の作品にはかなり前衛的手法がみられるが、やがて新ロマン主義的作風を示す。代表作にはオペラ『トロイラスとクレッシダ』(1954初演)、オラトリオ『ベルシャザールの饗宴』(1931初演)、2曲の交響曲、ビオラ協奏曲(1929)、映画音楽『ヘンリィ5世』『ハムレット』などがある。1951年ナイトの称号を受けた。
[寺田兼文]
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