日本大百科全書(ニッポニカ) 「シマイサキ」の意味・わかりやすい解説
シマイサキ
しまいさき / 縞伊佐幾
blotched terapon
[学] Terapon oxyrhynchus
硬骨魚綱スズキ目シマイサキ科に属する海水魚。津軽(つがる)海峡以南の日本海と太平洋沿岸、朝鮮半島、台湾、海南島、フィリピン沿岸などに分布する。南西諸島にはいない。体は細長く、わずかに側扁(そくへん)し、吻(ふん)は細長くてやや突出する。口は小さく、上顎(じょうがく)の後端は後鼻孔(こうびこう)下に達する。両顎に犬歯はなく、絨毛(じゅうもう)状歯帯があり、外列のものは肥大する。前鰓蓋(ぜんさいがい)骨は鋸歯(きょし)状で、下部のものは肥大する。主鰓蓋骨に2棘(きょく)がある。後側頭骨の後部は拡張し、外部に露出して、鋸歯縁がある。最大全長は33センチメートルで、普通は20センチメートル。幼魚では体は黄褐色~灰緑色で、4条の黒色縦帯がある。第3帯はもっとも太くて、吻端から目を通って尾柄(びへい)に達する。成長するにつれてそれらの間に3条の細い線が出現する。この縞模様によって、鹿児島県では猪仔(いのこ)とよぶ。尾びれは幼魚では透明であるが、成魚では黒い縦線が鰭条(きじょう)に沿って放射状に走る。15センチメートルくらいまでの幼魚は好んで内湾で生活し、堀割、汽水域にも入り、川を遡上(そじょう)するものもある。成魚は河口域や内湾にもいるが外海にも出る。おもに底生の無脊椎(むせきつい)動物や小形魚類を食べる。うきぶくろは前部と後部の2部にくびれており、これに共鳴させて「ググゥウ」と発音するが、これが和歌山県での呼び名のシャミセンやホラフキの由来である。体の黒い縞模様から、関西・九州などでは「スミヤキ」ともよばれる。産卵期は6~8月。定置網、投網(とあみ)、釣りなどで漁獲される。大衆魚で、塩焼き、煮つけ、フライなど家庭料理にされる。
[赤崎正人・尼岡邦夫 2017年4月18日]