改訂新版 世界大百科事典 「シュウービーヤ運動」の意味・わかりやすい解説
シュウービーヤ運動 (シュウービーヤうんどう)
Shu`ūbīya
アッバース朝初期の8世紀から9世紀にかけ,アラブと非アラブとの平等を主張したイスラムの文化運動。その担い手は,大部分がイラン系の新改宗者からなるカーティブ(書記)で,彼らはイスラム教徒の平等を説いたコーラン49章13節を拠り所とし,そこに記されたシュウーブ(民族,単数形はシャーブsha`b)を自らの呼び名とした。彼らはアダブ文学作品の著者でもあり,それを武器としてアラブ文化に対する伝統的イラン文化の優越を主張した。イスラム研究者ギブはこの運動の本質を,当時のカーティブがイスラム帝国の政治・社会制度と価値観とを,彼らの理想としたササン朝のそれに置き換えようとしたものとみる。したがってイスラム文化への重大な挑戦であったが,ジャーヒズらの努力により,アラブの民族的伝統に基づくアダブ文学作品が多く著され,人々がアラブ人文主義の真価を再発見するようになると,この運動はしだいに下火となった。
執筆者:嶋田 襄平
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報