日本大百科全書(ニッポニカ) 「シュバートマン石」の意味・わかりやすい解説
シュバートマン石
しゅばーとまんせき
schwertmannite
水酸化第二鉄鉱物の一つ。少量の硫酸イオン[SO4]2-を含むため硫酸塩とされることもある。1994年、フィンランドのピヘサルミPyhäsalmi鉱山で硫化鉄鉱物処理後に生じた土壌から発見された。最初にこの物質の特質を研究したドイツの土壌学者シュバートマンUdo Schwertmann(1927―2016)にちなんで命名された。赤金(あかがね)鉱に近似した水酸化物で、世界各地に分布しており、硫化鉄鉱物を多産した鉱山跡など、人為的に生成された一種の汚染物質であるともいえる。この種の物質が鉱物として確認されるには、自然界の産物として人為的な影響のないものの存在の確認が必要であったが、スイスのチラータール・アルプスZillertal Alpsの高度約2600メートルの地点に露出する、黄鉄鉱を含む結晶片岩の風化産物として発見されたものには人為的影響がないと判定され、鉱物種として確認されることとなった。近似的にはβ(ベータ)-FeOOHと同一相であるとして、ほかのFeOOHと同質異像関係にあるとみなすこともできる。最大径500ナノメートル(1ナノメートル=10-9メートル)程度の球状集合をなし、単独個体は針状、長さ最大90ナノメートル、幅2~4ナノメートル程度。
[加藤 昭 2017年5月19日]