日本大百科全書(ニッポニカ) 「リビア砂漠」の意味・わかりやすい解説
リビア砂漠
りびあさばく
Libyan Desert
北アフリカ、サハラ砂漠東部の呼称。リビア東半部から東はナイル川西岸まで、南はスーダン北西部に及ぶ。北限はほぼ北緯30度線に沿って東西に並ぶオアシス地帯で、その東端には海面下133メートルに達するカッターラ低地がある。年降水量は100ミリにも達せず、なかでもリビア南東部にあるクフラ盆地は、平均年降水量がわずか数ミリという極端な少雨地域である。春分を過ぎたころから吹き始める南風はギブリ、ハムシン、シロッコなどの名があり、これが吹くときには最低気温でさえも30℃を超えるほど暑く乾燥する。ワジ(涸(か)れ谷)さえも少なく、風の侵食による地形が目だつ。岩石砂漠(ハマダ)や礫(れき)砂漠(リビアではセリル)もあるが、リビアとエジプトの国境付近には砂丘が連なる広大な砂砂漠(エルグ)が広がる。塩分を含む砂漠土壌が分布し、植生はきわめて乏しい。地下水位は比較的浅く、シワ、ファラフラ、ダハラなどの鑽井(さんせい)盆地はオアシスとなっている。クフラ・オアシスで産するナツメヤシは良質で、ヨーロッパへ輸出される。リビアでは、砂漠の中にゼルテン、アマルをはじめ多数の油田が開発され、硫黄(いおう)分の少ない石油がパイプラインでシルテ湾岸まで送られている。
[中村和郎]