しをり(読み)しおり

日本大百科全書(ニッポニカ)「しをり」の解説

しをり
しおり / 撓

芭蕉(ばょう)俳諧(はいかい)の美的理念。「さび」の類縁美の一つ。芭蕉、および芭蕉の弟子たちは、「しほり」と表記した。「あはれ」が、「あはれ」などの感表現語を用いずに「姿」として一に具象され、そこに余情として「あはれ」を感得できるような句が、「しほり」のある句といえる。去来が、許六(きょりく)の「御命講(おめいこ)やあたまの青き新比丘尼(びくに)」の句に対して、「中の七字かはり候はば、あはれなる方も出来(いでく)べき御句也(なり)。(中略)一句の言葉、趣向を憐(あはれ)に被成(なされ)候へと申にては無之(これなく)候。其(その)一句のしほりの出来るやうにと、申たるにて候」(元禄(げんろく)8年正月29日付許六宛書簡)と述べていることによっても、そのことがうかがえる。芭蕉は、許六の「十団子(とをだご)も小粒になりぬ秋の風」の句を、「此(この)句しほりあり」(『去来抄』)と評したという。

[復本一郎]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典「しをり」の解説

しをり

俳諧用語。蕉風の俳諧でその本質,風趣についていう語。趣向,題材哀憐であるのをいうのでなく,哀憐の情をもって人間なり自然なりを眺める心から流露するもの,いわば愛が「しをり」である。森川許六の「十団子も小粒になりぬ秋の風」について芭蕉は「この句しをりあり」と言ったという。

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世界大百科事典 第2版「しをり」の解説

しおり【しをり】

〈萎(しを)る〉の連用形というのが通説であるが,近年〈湿(しほ)る〉の意に解すべきだという説がある。蕉門俳論では〈しほり〉と表記するのが一般的。去来は〈しほり〉は〈一句の句がら〉〈一句の姿〉〈一句の余情〉にあるという。また《俳諧問答》では〈しほりと憐れなる句は別なり。ただ内に根ざして外にあらはるゝものなり〉とも言っている。これらによれば〈しほり〉ある句は,憐れなる句と句がら,姿,余情において近似したところがあるとみられる。

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