俳諧論書。去来著。1704年(宝永1),執筆中に著者は病没し,〈先師評〉〈同門評〉〈故実〉〈修行教〉の4巻2冊が草稿のまま実弟魯町のもとに伝わった。前半の2巻1冊のみ現存。当初は落柿舎集と題する撰集の一部として企画されたらしい。写本として流布したが,75年(安永4),暁台(きようたい)が〈故実〉を除く3巻3冊として刊行。ただし,本文校訂は必ずしも草稿に忠実でない。〈先師評〉〈同門評〉は,句々に即した蕉門諸家の議論の記録。中に先師芭蕉の評言のまじるものは前者に収めてある。〈故実〉は俳諧の作法について師説を祖述したもの,〈修行教〉は蕉風俳諧の秘訣を説いたもので,師説および蕉門諸家の説の引用を含む。ともに著者の指導下にあった人々の疑問に答える形をとる。去来俳論の集大成であり,芭蕉自身に俳論の述作がないだけに,蕉風俳論の資料として,三冊子(さんぞうし)とともに最も信頼度が高い。
執筆者:白石 悌三
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去来の俳諧(はいかい)論書。去来晩年の1704年(宝永1)ごろ成立。「先師評」「同門評」「故実」「修業教」の4編からなり、前2編は去来自筆稿本、他は写本によって伝わる。1775年(安永4)に尾張(おわり)(愛知県)の暁台(きょうたい)らによって板本『去来抄』(「故実」を除く3編のみ)が刊行されている。内容は、去来がおりに触れて師芭蕉(ばしょう)から聞いた句評の詞(ことば)などを中心に、蕉門の高弟たちとたたかわせた作句論など、蕉風俳諧の理念・手法や表現意識にもわたっており、とくに不易流行(ふえきりゅうこう)や、さび・しをり・細みについての説、匂(にお)ひ・ひびき・俤(おもかげ)などの付合(つけあい)論は、蕉風俳諧の特質を知るうえに重要である。本文は、篤実な去来の人柄を反映して、師翁の教説に忠実な記述とみられることから、土芳(とほう)の『三冊子(さんぞうし)』とともに、蕉風俳論の根本資料として高い評価を与えられているが、去来自身の見解に基づく独自な構成意識のあることも見逃せない。
[堀切 實]
『栗山理一他校注・訳『日本古典文学全集51 連歌論集・能楽論集・俳論集』(1973・小学館)』▽『南信一著『総釈去来の俳論 下』(1975・風間書房)』
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出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
…内容は許六説批判を中心とした31項に,〈余評〉として《付句十七体》批判の1項を加えたもの。師説に基づく所論は穏健中正にして説得力に富み,のちの《去来抄》の素稿的性格を持つ。【白石 悌三】。…
※「去来抄」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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