ジニトロベンゼン(読み)じにとろべんぜん(その他表記)dinitrobenzene

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ジニトロベンゼン」の意味・わかりやすい解説

ジニトロベンゼン
じにとろべんぜん
dinitrobenzene

芳香族ニトロ化合物の一つ。ニトロ基の位置により、o(オルト)-、m(メタ)-、p(パラ)-ジニトロベンゼンの3種の異性体がある。いずれの化合物も白色に近い淡黄色固体である。m-ジニトロベンゼンはベンゼンまたはニトロベンゼンを硝酸硫酸の混合酸でニトロ化すると容易に合成できる。この方法によればo-体とp-体はほとんど生成しない。o-およびp-ジニトロベンゼンは、対応するo-およびp-ニトロアニリン亜硝酸ナトリウムジアゾニウム塩としたのち、ふたたび亜硝酸ナトリウムを作用させると得られる。3種の化合物はいずれもエタノールエーテルに溶け、水には溶けないが、水蒸気蒸留されやすい。容易に合成できることにより工業的に重要なのはm-ジニトロベンゼンであり、硫化ナトリウムなどで部分還元すればm-ニトロアニリンが、鉄‐塩酸で還元すればm-フェニレンジアミンC6H4(NH2)2が得られ、染料中間体として用いられる。ジニトロベンゼンはどれも敏感ではないが爆発性をもち、また有毒で肝臓を冒す。

[谷利陸平]


ジニトロベンゼン(データノート)
じにとろべんぜんでーたのーと

ジニトロベンゼン

m-ジニトロベンゼン
 分子式 C6H4N2O4
 分子量 168.1
 融点  92℃
 沸点  297℃
 比重  1.5656(測定温度30℃)

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

化学辞典 第2版 「ジニトロベンゼン」の解説

ジニトロベンゼン
ジニトロベンゼン
dinitrobenzene

C6H4N2O4(168.11).C6H4(NO2)2o-,m-,p-ジニトロベンゼンの3種類の異性体がある.ベンゼンまたはニトロベンゼンを混酸でニトロ化すれば,m-ジニトロベンゼンが85~90% 収率で生成するが,約8% のo-およびp-ジニトロベンゼンも得られる.m-ジニトロベンゼンは淡黄色の結晶.融点89~90 ℃,沸点167 ℃(1.8 kPa).1.5751.ベンゼン,トルエンクロロホルムなどに溶け,また水蒸気蒸留できる.硫化ナトリウムなどの弱い還元剤で部分還元すればm-ニトロアニリンが得られる.鉄と塩酸などで還元すればm-フェニレンジアミンとなる.これらは染料中間物である.o-およびp-ジニトロベンゼンを得るには,それぞれ対応するニトロアニリンを酸化すればニトロニトロソベンゼンを経て合成できる.o-ジニトロベンゼンは融点118 ℃,沸点319 ℃.1.3119.p-ジニトロベンゼンは融点173~174 ℃,沸点299 ℃.1.625.これらは化学的に不安定で,ニトロ基の一つは容易に求核置換を受ける.

出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報

今日のキーワード

ビャンビャン麺

小麦粉を練って作った生地を、幅3センチ程度に平たくのばし、切らずに長いままゆでた麺。形はきしめんに似る。中国陝西せんせい省の料理。多く、唐辛子などの香辛料が入ったたれと、熱した香味油をからめて食べる。...

ビャンビャン麺の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android