日本大百科全書(ニッポニカ) 「ニトロアニリン」の意味・わかりやすい解説
ニトロアニリン
にとろあにりん
nitroaniline
芳香族ニトロ化合物の一つ。化学式NO2C6H4NH2、分子量138.1。ニトロ基の置換位置によりo(オルト)-、m(メタ)-、p(パラ)-ニトロアニリンの3種の異性体がある。いずれも水に不溶、無機酸に可溶。オルト体(融点71.5℃)とパラ体(融点147.8℃)はアセトアニリドをニトロ化し、クロロホルムでオルト体を抽出後、それぞれ加水分解して得る。m-ジニトロベンゼンを計算量の鉄と塩酸で部分還元すればメタ体(融点114.6℃)を得る。アゾ染料合成の重要な中間体で、たとえば、パラ体をジアゾ化し、2-ナフトールと反応させれば、油溶性赤色染料パラレッドが得られる( )。メタ体ではニトロアニリンオレンジを生ずる。このほかに、合成中間体や腐食防止剤などの用途をもつが、毒性があるので取扱いには注意を要する。
[加治有恒・廣田 穰 2015年3月19日]