日本大百科全書(ニッポニカ) 「反体制運動」の意味・わかりやすい解説
反体制運動
はんたいせいうんどう
最広義には既存の政治的・経済的権力に対して挑戦する運動一般をいう。この場合には、既存の政治体制・経済体制内部でその体制を前提として行われる権力闘争なども含まれる。これに対してより狭義には、既存の政治的権力・経済的権力がよってたつ社会体制そのものに対して変革を迫る運動を反体制運動とよぶ。しかしこの場合でも、一方では明確な綱領と組織をもった革命運動から、他方では地域性・直接性に縛られている一揆(いっき)からは区別される場合が多い。
[矢澤修次郎]
体制と反体制
ごく自然に理解すれば、反体制運動とは体制に反対する運動のことであるから、体制というものをどのように理解するかが重要な問題となる。もともと体制というのは、フランス語のレジームrégimeにあたり、管理的法規の総体を意味していたが、徐々に統治形態・政体を意味するようになっていった。そして1930年代になると、社会主義の官僚制化と、資本主義経済の行き詰まりを利用したファシズムの勝利という現実を踏まえて、共産主義もファシズムも全体主義体制という点では変わりがないという議論がおこり、体制概念は社会的・経済的領域にまで拡大されていった。こうした文脈においては、反体制運動は、官僚制化に反対して自由を守り育てる、社会主義でも資本主義でもない新しい体制を目ざす運動という意味合いをもっている。
これに対して、マルクス主義やそれに近い立場においては、一定の生産関係のあり方によって政治、法律、イデオロギーなどの諸分野のあり方が規定され、一つの歴史的全体社会に統一性が与えられている場合に、それを体制とよんだり、一定の階級によって掌握された現存の支配的な政治権力、その担い手である支配階級、およびそれらによって維持され支えられる経済、労働、法律、イデオロギーなどの統一体としての社会秩序をひっくるめて体制とよんだりしている。今日、社会は一段と複雑化しているので、反核、女性、エコロジーなどをも取り入れた新しい反体制運動論が要請されている。
[矢澤修次郎]
『G・ディミトロフ著、坂井信義・村田陽一訳『新訳 反ファシズム統一戦線』(大月書店・国民文庫)』