ジャンパー膝(読み)ジャンパーヒザ(英語表記)Jumper knee

デジタル大辞泉 「ジャンパー膝」の意味・読み・例文・類語

ジャンパー‐ひざ【ジャンパー膝】

jumper's kneeスポーツによる障害の一つ。野球ひじと同様、同じ運動の過度の反復により関節の近くのけんに起こる炎症。

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六訂版 家庭医学大全科 「ジャンパー膝」の解説

ジャンパー膝
ジャンパーひざ
Jumper knee
(運動器系の病気(外傷を含む))

どんな障害か

 ジャンプ動作が要求される、バスケットボールバレーボールハンドボール、陸上競技(ジャンプ選手)などの種目で、大腿四頭筋(だいたいしとうきん)の収縮筋力が膝蓋骨(しつがいこつ)膝蓋腱(しつがいけん)(膝蓋靭帯(じんたい))の接合部に繰り返しかかることで、腱の微小断裂や変性が生じる障害のことです。

 本書では、狭い意味でのジャンパー膝について解説します。このジャンパー膝の痛みの部位は膝蓋骨のすぐ下にあり、膝蓋靭帯炎ともいいます。多くは骨端線の閉じる15歳以降で発症します。

見落としやすい障害と合併損傷

 診断で区別するべき疾患として、広い意味でのジャンパー膝に含まれるオスグッド・シュラッター病、シンディング・ラーセン・ヨハンソン病、大腿四頭筋総腱炎(そうけんえん)があります。

 オスグッド・シュラッター病は年齢的にやや若年(10~15歳)で発症すること、膝蓋腱脛骨(けいこつ)の境目(脛骨粗面)に痛みが生じ、そこが骨性に隆起をすることなどで容易に区別できます。シンディング・ラーセン・ヨハンソン病も発症年齢がやや若年(10~12歳)で、単純X線像で膝蓋骨下端(下極)に石灰化像や骨下像がみられます。大腿四頭筋総腱炎でも発症年齢はほぼ同じですが、疼痛の部位が膝蓋骨の上方で大腿四頭筋との境界にあることで区別できます。

 ジャンパー膝が進行すると、膝蓋靭帯の部分断裂や壊死(えし)を生じることがあり、まれに膝蓋腱の完全断裂が生じることもあります。これらの場合には手術が必要となります。

症状の現れ方

 ロールズという人が症状を4期に分類しています。

 1期は、スポーツ開始直後に膝蓋骨の直下か直上に疼痛が生じますが、スポーツをするのに支障のないことが多い時期です。

 しかし、そのままスポーツを続けると2期となります。運動開始時と運動後には痛みが生じますが、運動中には一時的に疼痛は軽快、消失するようになります。スポーツの継続は、この時点では可能なことが多いのですが、専門医の診察が必要な時期です。

 さらに進行して3期になると、痛みのためにスポーツの継続が困難となります。4期では膝蓋腱の断裂が生じます。

 痛みは、とくにダッシュやジャンプの動作で強く、ジャンプでは着地動作での症状が強くなる傾向があります。

検査と診断

 膝蓋骨の直下、もしくは直上に圧痛があり、時に腫脹(しゅちょう)はれ)や熱感を伴います。単純X線像では異常が認められることは少なく、あっても膝蓋骨下極の骨延長や骨棘(こっきょく)の形成のみです。

治療の方法

 基本的には、保存療法として安静、大腿四頭筋のストレッチテーピングサポーター温熱などの理学治療、消炎鎮痛薬の投与などが組み合わされて行われます。

 症状が軽い場合には、ストレッチの併用でスポーツ活動の継続は可能ですが、2期以上に進行している場合にはジャンプ動作の制限やスポーツの休止を指導します。スポーツを継続する場合は、膝関節の深屈曲動作を避けるようにします。

 症状が強く難治性の場合には、膝蓋腱の変性部分の切除や膝蓋骨へのドリリングなどを行う手術が施行されます。

関連項目

オスグッド・シュラッター病

一戸 貞文

出典 法研「六訂版 家庭医学大全科」六訂版 家庭医学大全科について 情報

家庭医学館 「ジャンパー膝」の解説

じゃんぱーひざしつがいじんたいえん【ジャンパー膝(膝蓋靱帯炎) Jumper's Knee】

[どんな病気か]
 膝蓋靱帯の炎症です。跳躍、キック、疾走などで、膝蓋靱帯に微小な損傷が発生して炎症をおこし、膝蓋骨の下に痛みが出るものです。
 バスケットボールやバレーボールなどのジャンプを多用するスポーツ、重量挙げなどのスクワット(しゃがみ込み)を行なうスポーツでおこります。
[症状]
 膝蓋骨の下が徐々に痛むようになります。この痛みは、つぎの三段階に分けられます。
●軽度=痛みを感じるのは運動後で、運動はふつうにできる。
●中等度=運動中、運動後に痛みを感じるが、運動は十分にできる。
●重度=運動中、運動後のほか、日常動作でも痛みを感じ、十分に運動ができない。
 痛みは、座って脚(あし)を伸ばしたり、膝の靱帯を押したりすると強くなります。長い時間、膝を動かさずにいると膝がかたくなります。
[治療]
 痛みが出たらジャンプ、ランニングなどの原因となる運動を中止し、膝の安静をはかります。
 そして、最初の3日間はアイシング(冷却)やアイスマッサージを行ない、その後は温湿布(おんしっぷ)をします。
 痛みには、抗炎症薬や鎮痛薬を服用します。これらの薬を含んだ外用剤を膝に用いることもあります。
[予防]
 大腿四頭筋(だいたいしとうきん)のストレッチングをじっくりと行なうと、大腿四頭筋の伸びがよくなり、膝靱帯にかかる負担が少なくなって、ジャンパー膝の発症を予防します。
 ジャンプやダッシュを行なう前に、入念なウオーミングアップを行なって、からだ全体を暖めることも予防にはたいせつです。シューズは、底の厚いものを使用しましょう。痛みを軽減するのに効果があります。

出典 小学館家庭医学館について 情報

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