日本大百科全書(ニッポニカ) 「スエズ戦争」の意味・わかりやすい解説
スエズ戦争
すえずせんそう
Suez War
1956年、エジプトとイスラエル、イギリス、フランスとの間に起きた戦争。スエズ動乱、第二次中東戦争ともいう。1956年6月の駐留イギリス軍完全撤退に続いて、7月26日エジプトのナセル政府は、多国籍企業であるスエズ運河会社の国有化を宣言、運河地帯はエジプトの主権下に復した。当時、ナセル政府は非同盟中立主義、社会主義国との友好外交を推進、1952年以来のエジプト革命は新局面を迎えていた。運河国有化のアラブ民族運動への波及効果を恐れたイギリス、フランス、イスラエル3国は対エジプト共同参戦を約束(セーブル秘密協定)、まずイスラエルが10月29日に、ついで「国際運河の安全保護」を口実とする英仏が10月31日に侵攻。イスラエルはシナイ半島、英仏は運河地帯を占領した。だがエジプト国民の抵抗と国際世論の非難の前に占領は失敗(11月6日停戦)。結果的にこの戦争は、運河国有化を不動のものとしたエジプトが自主独立へ大きく踏み出すのを可能とした。
[藤田 進]