日本大百科全書(ニッポニカ) 「スコットランド・ヤード」の意味・わかりやすい解説
スコットランド・ヤード
すこっとらんどやーど
Scotland Yard
ロンドンにある首都警察、Metropolitan Policeの別称。1829年の創立時代、詰め所と後部出入口が、昔のスコットランド・ヤード(スコットランド王のロンドン屋敷跡)に向いていたために、その名のほうが一般的になった。創立当時は、制服警官のみの構成で、すべての警察活動を行っていたが、1843年、ロンドンに凶悪殺人事件が続発したときから、初めて私服の探偵が専任する犯罪捜査局が設けられ、これがのちにCIDという略称でよばれて、強力な犯罪捜査組織の中心になるようになった。その管轄はロンドン市内と、その周辺地区の一部。
イギリスは一貫した自治警察組織国家であるが、重大な犯罪事件また難事件にあっては、地方自治警察の要請によってスコットランド・ヤードが出動し、CIDの豊富な経験と、資料を元にして捜査にあたる。現在、世界的に広く行われている刑事活動の始まりともなったもので、早くも1850年に、このスコットランド・ヤードの探偵が登場する小説をディケンズが発表し、以後、イギリス推理小説や映画などで数々のスコットランド・ヤード刑事が生まれ、その存在を世界的に有名にした。スコットランド・ヤードは、国家的な政治犯罪、騒乱についても捜査権をもち、内務大臣の指揮、命令ができる機関である。
[梶 龍雄]