改訂新版 世界大百科事典 「スズメノヤリ」の意味・わかりやすい解説
スズメノヤリ
Luzula capitata Miq.
低山地の明るい草地や路傍に普通にみられるイグサ科の多年草。日本全土に広く分布する。花茎は高さ10~30cm。茎頂に,1個の頭状に密集した花序をつける。花期は4~5月。花被片は小さく長さ2.5~3mmで,褐色を帯びるため,花序も褐色に見える。葉は線形でふちに長白毛がある。地下茎は塊状で,この性質にちなんでシバイモと呼ぶ地方もある。食料不足のときには果実を食べた記録がある。
スズメノヤリ属Luzula(英名wood rush)はユーラシアの温帯に広く分布し,約80種を含む。日本には9種ある。ヌカボシソウL.plumosa E.Meyerはスズメノヤリ同様,日本全土に広く分布し普通にみられる植物で,花序は枝をうち,集散状となる。やはり明るい草地や路傍に生える。スズメノヤリ属はカヤツリグサ科のスゲ属と同様に,染色体上の動原体が分散構造をとっており,細胞遺伝学上は特異な植物として知られる。
執筆者:矢原 徹一
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報