改訂新版 世界大百科事典 「スズメノヒエ」の意味・わかりやすい解説
スズメノヒエ
Paspalum thunbergii Kunth
イネ科の多年草で,日当りのよい草原にやや普通に見かける。叢生(そうせい)して株を作る。茎は細く,ほとんど基部から立ち,高さは50~90cmである。葉はおおむね茎の基部に2列に並び,線形で,長さは10~30cm,幅は5~8mm,濃い緑色で,全体に長く開出した軟毛がある。8~10月に花序を出す。花序は長さ10cmくらいの中軸に,総(ふさ)が交互に3~5個ついたもので,総の長さは5~10cm,その下側に黄緑色の小穂をやや密に2列につける。小穂は卵円形で長さ2.5~2.7mm,短毛をつけ,短い柄があり,先は円く,芒(のぎ)はない。本州から琉球までの日本と,朝鮮,中国中部以南に分布する。
スズメノヒエ属Paspalumは主としてアメリカの熱帯に300種以上もある大きな属で,日本では総が1~2個のキシュウスズメノヒエP.distichum L.やスズメノヒエに似て小穂に毛のないスズメノコビエP.orbiculare Forst.等が見られる。牧草に使われているものにダリスグラス,バヒアグラスがある。また1種P.scrobiculatum L.(英名Kodok millet)は雑穀として,アフリカやインドで栽培される。
執筆者:小山 鐵夫
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報