イギリスの批評家。オーストリア系ユダヤ人を両親としてパリに生まれ、アメリカ国籍をもち、ケンブリッジ大学チャーチル・カレッジ特別研究員などを経て、ジュネーブ大学、ケンブリッジ大学、オックスフォード大学などで教える。1959年に『トルストイかドストエフスキーか』で出発して以来、ヨーロッパ文学や思想への幅広い教養と多言語的素養を軸にして、文明批評的な評論活動を国際的なスケールで行う。1974年(昭和49)には慶応大学の招待で来日し、日本の英米文学者や批評家たちと激論を交わすなど各界に深い印象を与えた。批評書としてはほかに『悲劇の死』(1961)、『言語と沈黙』(1968)、『脱領域の知性』(1971)、『青ひげの城にて』(1971)、『バベルの後に』(1975)、『アンティゴネー』(1984。邦訳『アンティゴネーの変貌(へんぼう)』)などがある。小説『サン・クリストバルへのA.H.の移送』(1981。邦訳『ヒトラーの弁明――サンクリストバルへのA・Hの移送』)、自伝『正誤表』(1997。邦訳『G・スタイナー自伝』)などもある。
[富士川義之 2015年7月21日]
『中川敏訳『トルストイかドストエフスキーか』(1968/新装復刊・2000・白水社)』▽『由良君美他訳『言語と沈黙』上下(1969、1970/新装版・2001・せりか書房)』▽『由良君美他訳『脱領域の知性』(1972/新装版・1981・河出書房新社)』▽『桂田重利訳『青鬚の城にて――文化の再定義への覚書』(1973/改題『青ひげの城にて』・2000・みすず書房)』▽『ジョージ・スタイナー著、諸岡敏行訳『白夜のチェス戦争』(1978・晶文社)』▽『貴志哲雄・蜂谷昭雄訳『悲劇の死』(1979・筑摩書房/ちくま学芸文庫)』▽『海老根宏・山本史郎訳『アンティゴネーの変貌』(1989・みすず書房)』▽『ジョージ・スタイナー著、生松敬三訳『ハイデガー』(1992・岩波書店/改題『マルティン・ハイデガー』・岩波現代文庫)』▽『佐川愛子・大西哲訳『ヒトラーの弁明――サンクリストバルへのA・Hの移送』(1992・三交社)』▽『ジョージ・スタイナー著、工藤政司訳『真の存在』(1995・法政大学出版局)』▽『工藤政司訳『G・スタイナー自伝』(1998・みすず書房)』▽『亀山健吉訳『バベルの後に――言葉と翻訳の諸相』上下(1999、2009・法政大学出版局)』▽『ジョージ・スタイナー著、伊藤誓訳『言葉への情熱』(2000・法政大学出版局)』
アメリカの文芸批評家。オーストリア系ユダヤ人としてパリに生まれ,英独仏3ヵ国語を駆使する家庭に育つ。第2次大戦中の1940年,単身アメリカに亡命。両親はナチスによる迫害の犠牲になったものと思われる。ハーバード大学(1950年修士号取得),オックスフォード大学(1955年博士号取得)に学んだ後,プリンストン高等研究所研究員(1956-58)となる。59年,処女評論《トルストイかドストエフスキーか》で批評家としての地位を確立。61年以降ケンブリッジ大学チャーチル・カレッジで,さらに74年以降はジュネーブ大学で比較文学などを講じる。著書には,ヨーロッパ演劇における悲劇の系譜を文化全体,世界観の問題からとらえた《悲劇の死》(1961),現代文明の終末的様相を言語現象に焦点を合わせて論じた批評集《言語と沈黙》(1967),文学と言語革命を扱った《脱領域の知性》(1971),文明論《青髯(あおひげ)の城にて》(1971)などがある。スタイナーの国際的視野と問題意識の背後にあるものは,ナチスによるユダヤ人迫害事件に一つの文化の終りを見とり,その文化の生残りとして自分を規定する立場である。なお,74年来日した。
執筆者:鈴木 建三
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