日本大百科全書(ニッポニカ) 「ソルボンヌ」の意味・わかりやすい解説
ソルボンヌ
そるぼんぬ
Sorbonne
フランス、パリにある同国最古の歴史をもつパリ大学の通称。イタリアのボローニャ大学、イギリスのオックスフォード、ケンブリッジ両大学などと並び、中世ヨーロッパで各国から好学の徒が集まった名門大学の一つに数えられる。起源は、13世紀に聖職者ソルボンRobert de Sorbon(1201―74)がパリに開設した、神学の研究・講義を主とする学寮兼研究棟であったが、やがて人文・社会科学、自然科学、医学等へと漸次分野を広げて発展。19世紀末には国立「パリ大学」に改称・再編されるが、「ソルボンヌ」の名は、以後も久しく通称として親しまれてきた。
創設者ソルボンは、1257年に「神学部」を設立、1271年には「哲学・文芸学部」に発展させたが、以後、ルネサンス期、大革命期、ナポレオン時代と続く歴史のなかで、ソルボンヌは、近代科学の勃興(ぼっこう)、教会の衰退などの大波に揺られながら、何度か浮沈する。しかし、1890年代、文部大臣ジュール・フェリーによる数次の改革で、学部(ファキュルテ)を統合した大学(ユニベルシテ)という地位を与えられて「パリ大学」となり、20世紀に入って発展した。第二次世界大戦後、一大学で学生数20万人を超えるまでにマンモス化し、旧来の管理・運営制度が対応できなくなり、1968~1969年の世界的な学生造反(五月革命)の発火点ともなった。そうした混乱ののち断行されたフランス高等教育の全面的な刷新(フォール改革)によって、パリ大学はパリ市内外に及ぶ13校の新制国立大学(パリ第一~パリ第十三大学)に分離・独立した。うち、パリ7区の「カルチエ・ラタン」(ラテン区)と称される伝統的な本家キャンパス地区に開学されたパリ第一大学Université Panthéon-Sorbonne、パリ第三大学Université de la Sorbonne Nouvelleなどは、「ソルボンヌ」の正式別称を残しており、なかでも、人文・社会科学、芸術を主専攻分野とするパリ第四大学Université de Paris-Sorbonneは、旧ソルボンヌ直系の大学と目されている。
[井上星児]