スラー酒(読み)すらーしゅ(英語表記)surā

日本大百科全書(ニッポニカ) 「スラー酒」の意味・わかりやすい解説

スラー酒
すらーしゅ
surā

古代インドの飲料、とりわけ「酒」を意味し、窣羅酒と音訳される。古くは神酒ソーマと同義的に用いられ、活力、生命力の源とされていたが、しだいに悪い意味に用いられ、飲酒の害、酩酊(めいてい)を説く文脈に現れ、法典などではスラー酒を飲むことを固く禁じている。『マヌ法典』第11章95節によるとスラー酒に3種あり、糖蜜(とうみつ)、陸稲、マドゥーカ花より製すといわれ、いずれも食物の屑(くず)で、夜叉(やしゃ)、羅刹(らせつ)、吸血鬼の飲料とされる。また、医学の文献では麻酔薬の義にも用いられる。人格化されてそれはまたスラーデービー、バールニーともいわれ、酒酔いを主宰する女神となり、ヒンドゥー教聖典に伝説が語られている。

[原 實]

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