オランダの博物学者、解剖学者。アムステルダムの生まれ。薬剤師で物集めの趣味をもつ父の影響を受け、幼いころより好奇心が旺盛(おうせい)であった。医学を学ぶためにライデン大学に入学した(1661)が、彼の収集した昆虫は学友たちを驚かせたという。フランスにも出かけ、デカルト主義的機械論について議論もした。その影響は肺の運動の説明に反映され、この呼吸の研究で医学博士となった(1667)。また筋肉の収縮においては形は変化するが体積は変化しないことを証明し、筋肉への物質の流入説を否定した。しかし彼のおもな業績は顕微鏡観察によるもので、とくに大学入学以前の赤血球の発見(1658)が有名である。また昆虫学の祖ともいわれ、多くの種の昆虫を解剖し、その生殖法や生活史を記載した。これらの研究は生前あまり知られることがなかったが、死後ブールハーフェによりまとめられ『自然の聖書』Biblia naturae2巻(1737~1738)として出版された。
[大林雅之]
オランダの解剖学者,昆虫学者。アムステルダム生れ。ライデン大学に入学,ホールネJ.van Horne,F.シルビウスに師事。解剖のテクニックに優れ,カエルの筋-神経標本を用いての筋収縮実験を初めて行いクローンW.Croone,N.ステノらに紹介,精気流入による筋肉拡張説否定の動きに刺激を与えた。また,アムステルダムで解剖グループを結成,多種類の動物解剖を行ったほか,顕微鏡を用いて昆虫の内部構造,発生過程を研究し,アリストテレス以来の昆虫像を一変させた。しかし,社会的には恵まれず,R.deグラーフ,ステノらとの優先権争いをひきおこしたうえ,健康を害し,晩年は宗教団体の活動に没頭,デカルト的合理主義と神秘思想の間を揺れ動いた。生前,出版されることのなかった昆虫研究などの科学上の著作はH.ブールハーフェによって《自然の聖書Biblia naturae》(1737-38)として世に出されたが,これには,赤血球の発見(1658),リンパ管における弁の発見(1664)などの業績が含まれている。
執筆者:月沢 美代子
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…17世紀になって顕微鏡観察がはじまり,それまでは頭部と心臓しか出現していないと思われていた時期に,胚体の諸部分がすでに形成されている事実が,M.マルピーギによって発見された(1672)。またJ.スワンメルダムは,さなぎのなかに成体が折りたたまれて入っていることを明らかにした(1669)。この段階では精子の存在は知られておらず,卵に微小成体が存在すると理解されたので,この型の前成説は卵原説と名づけられている。…
※「スワンメルダム」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
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