ズイムシアカタマゴバチ(その他表記)Trichogramma japonicum

改訂新版 世界大百科事典 「ズイムシアカタマゴバチ」の意味・わかりやすい解説

ズイムシアカタマゴバチ
Trichogramma japonicum

膜翅目タマゴヤドリコバチ科の昆虫。体長0.5mmほどの小さいハチ。体は黄褐色で,腹部褐色複眼は赤く翅は透明で長い縁毛がある。腹部の先端はとがり,産卵管は突出する。日本,台湾フィリピン中国ジャワインドなどに分布する。水田のように湿った草地を好みいろいろな昆虫の卵に寄生するが,おもにイネ害虫ズイムシ類のニカメイガサンカメイガの卵に寄生し,ズイムシの天敵として重要。近縁種のキイロタマゴバチT.dendrolimiは森林にすみマツケムシ,チャハマキ,ナシヒメシンクイなどの卵に寄生する。ヨトウタマゴバチT.evanescensは草原にすみ,おもにヨトウムシなど畑の害虫の卵に寄生する。
執筆者:

出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ズイムシアカタマゴバチ」の意味・わかりやすい解説

ズイムシアカタマゴバチ
ずいむしあかたまごばち / 螟虫赤卵蜂
[学] Trichogramma japonicum

節足動物門昆虫綱膜翅(まくし)目タマゴヤドリコバチ科に属する昆虫。日本、朝鮮半島、中国、台湾、フィリピン、東南アジア、インドに広く分布。体長0.4ミリメートル内外の微小な卵寄生バチで、体は黄褐色で腹部は褐色。複眼は赤色触角は雌が6節、雄が4節よりなる。イネの茎を食害するニカメイガやサンカメイガなどの卵に寄生して、これを殺す重要な天敵として有名である。そのほか、ウラナミシジミフタオビコヤガイチモンジセセリなどの卵にも寄生する。

 一般にTrichogramma属の種類は、成育期間中の温度によって体色や形態に変化(季節型)が生じるので、分類上、注意を要する。

[立川哲三郎]


出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ズイムシアカタマゴバチ」の意味・わかりやすい解説

ズイムシアカタマゴバチ
Trichogramma japonicum

膜翅目タマゴヤドリコバチ科。雌の体長 0.4mm内外。体は短太,黄褐色で,腹部は褐色。翅は透明で前翅の基部はやや曇る。触角は6節から成り,先端の1節は長く棍棒状になっている。産卵管はわずかに腹端をこえて突出する。雄の触角は4節。ニカメイガイッテンオオメイガウラナミシジミの卵に寄生する重要な天敵である。日本全土,台湾,中国,東南アジアに分布する。同属の近縁種が多く,すべて昆虫の卵に寄生し,成育期間中の温度によって形態や色彩に変化を生じる。

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報

百科事典マイペディア 「ズイムシアカタマゴバチ」の意味・わかりやすい解説

ズイムシアカタマゴバチ

膜翅(まくし)目タマゴコバチ科の昆虫。体長0.5mm内外の微小種で,体は黄褐色。ズイムシ類の天敵として知られ,幼虫はニカメイガ,サンカメイガなどの卵に寄生する。日本全土,中国,台湾,インド,ジャワ,フィリピンなどに広く分布している。

出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報

今日のキーワード

カイロス

宇宙事業会社スペースワンが開発した小型ロケット。固体燃料の3段式で、宇宙航空研究開発機構(JAXA)が開発を進めるイプシロンSよりもさらに小さい。スペースワンは契約から打ち上げまでの期間で世界最短を...

カイロスの用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android