日本大百科全書(ニッポニカ) 「ズットナー」の意味・わかりやすい解説
ズットナー
ずっとなー
Bertha Felicie Sophie von Suttner
(1843―1914)
オーストリアの作家、平和主義者。キンスキー伯爵家の令嬢として、オーストリア帝国のプラハに生まれる。父は陸軍元帥であったが、彼女が生まれる前に死去し、母の手で育てられた。1876年に男爵アルトゥール・フォン・ズットナーArthur Gundaccar von Suttner(1850―1902)と結婚、ともに著述家として知られるようになった。短期間であるが結婚前に、ノーベル賞をつくったノーベルの秘書を務めており、その後もノーベルとは交流が続いた。ノーベル賞に平和賞が設けられたのは、彼女の影響が少なくないとされている。1889年に戦争の恐怖に耐えるヒロインを描いた小説『武器を捨てよ!』Die Waffen niederを出版、世界的反響をよんだ。このときから彼女は平和運動に積極的に参加し、1891年オーストリア平和協会を設立、その後も多くの平和団体に参加し、講演、執筆活動を通じて平和を訴えた。1905年女性として初めてノーベル平和賞を受賞、以後も休むことなく平和運動を続けたが、彼女がもっとも恐れていた第一次世界大戦が始まる前の1914年6月に死去した。
[編集部]
『ズットナー研究会訳『武器を捨てよ!』上下(2011・新日本出版社)』