日本大百科全書(ニッポニカ) 「セミヤドリガ」の意味・わかりやすい解説
セミヤドリガ
せみやどりが / 蝉寄生蛾
昆虫綱鱗翅(りんし)目セミヤドリガ科Epipyropidaeの総称。幼虫がセミやテングスケバのような、半翅目同翅亜目の成虫に外部寄生し、体液を吸って成長するきわめて特異なグループである。世界の温帯から熱帯に数十種知られているだけであるが、未発見種がかなり残っているものと推定される。日本にはセミヤドリガとハゴロモヤドリガの2種が知られている。
和名セミヤドリガEpipomponia nawaiは、はねの開張約20ミリメートル。体翅とも黒く、前翅には青色の波状線を散布する。幼虫はヒグラシ、ミンミンゼミ、アブラゼミ、ツクツクボウシなどの腹部に寄生して体液を吸い、老熟すると白蝋(はくろう)に覆われる。セミの体から離れた老熟幼虫は、樹幹や葉上で白蝋に覆われた白い繭をつくり、約2週間で成虫が羽化する。セミの成虫は1週間くらいしか生きていないので、ガの初齢幼虫がセミの体に付着してから、老熟するまでの期間も非常に短い。このガは、1年の大部分を卵で過ごすことになる。寄生率のもっとも高いのはヒグラシである。本州、四国、九州、台湾に分布し、成虫はセミの出現する8、9月にみられる。灯火に飛来することがある。
ハゴロモヤドリガEpiricania hagoromoは、さらに小形で、幼虫はスケバハゴロモ、ベッコウハゴロモ、テングスケバなどの腹部に外部寄生する。本州、九州に分布する。
[井上 寛]