改訂新版 世界大百科事典 「テングスケバ」の意味・わかりやすい解説
テングスケバ
半翅目同翅亜目テングスケバ科に属する昆虫の総称,またはそのうちの1種を指す。テングスケバ科Dictyopharidaeは世界のほとんどの地域に分布し,現在約500種が知られており,南アメリカや東南アジアなどの熱帯や亜熱帯地方から多くの種が記録されている。日本からはテングスケバ,ナカノテングスケバ,クロテングスケバ,ツマグロテングスケバ,ミツハシテングスケバの4属5種が知られている。この科の種の多くは頭部が前方に突出し,あたかも天狗の鼻を連想させるところから和名の由来ともなっている。英名はlong-nosed planthopper。スケバは透け羽の意で透明または半透明の翅を有するものが多いことからきている。木本,草本など種々の植物に寄食し,一生を植物上で過ごす。ときに農作物に加害する種もあるが,とくに大きな問題とはならない。
テングスケバDictyophara patruelisは翅端まで13mm内外,全体が淡緑色で顔の側面,胸部背面に橙色の条線を備えた美しい種で,本州,四国,九州,沖縄,朝鮮半島,台湾に分布する。イネ科植物,とくにススキの葉上でよく見られる。成虫は9~10月ころ出現する。
執筆者:堀 義宏
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報