せめて(読み)セメテ

デジタル大辞泉 「せめて」の意味・読み・例文・類語

せめ‐て

[副]《動詞「責せめる」の連用形に助詞「て」の付いたもの》
1 不満足ながら、これだけは実現させたいという最低限の願望を表す。少なくとも。十分ではないが、これだけでも。「せめて声だけでも聞きたい」「せめて10歳若ければなあ」
2 しいて。無理に。
「霧ひとへ隔たれるやうに透きて見え給ふを、―絶え間に見奉れば」〈更級〉
3 痛切に。切実に。
「このことの―あはれに悲しう侍りしかば」〈大鏡・時平〉
4 非常に。きわめて。
「高麗の紙の薄様だちたるが、―なまめかしきを」〈源・梅枝〉
[類語]少なくとも・せめても・最低限・最小限・ミニマム・えんやらやっと・やっとのことで・どうにかこうにか・どうにか・やっと・ようやく・何とか・かろうじて・からくも・危うく・すんでのところ・間一髪・危なく・すんでのこと・すんでに・あわや・九死に一生を得る・すれすれ・ようよう・ようやっと・どうかこうか・かつがつ・どうやらこうやら・曲がりなりにも・まあ・まあまあ・よっぽど・かなり・なかなか・わりあい・わりかた・わりかし・割に・比較的・まずまず・かすかす・どうやら・なんとかかんとか・そこそこ・それなり・増し・次善・可・セカンドベスト・ベター・及第・無難・ほどほど・捨てたものではない・満更まんざらでもない・まだしも・まだ・未いまだし・未だ・不徹底・不十分・及ばずながら・不全・不完全・どうなりこうなり・一応・急場しのぎ・当座しのぎ・一時しのぎ・その場しのぎ・最早もはや・畢竟ひっきょう・結局・やはり・所詮・どの道・いずれにしても・結句・遂に・とどのつまり・詰まるところ・帰するところ・詮ずるところ・要するに・いずれ・どうせ・つまり・とうとう・いよいよ・挙げ句・挙げ句の果て・差し詰め・究竟きゅうきょう・果ては・何と言っても・どっち道・とにかく・何しろ・何せ・何分なにぶん・何分なにぶんにも・なんにせよ・ともかく・ともかくも・ともあれ・とまれ・とにもかくにも・それはともあれ・遅かれ早かれ・善かれ悪しかれ・遅ればせ・思い通り・やっとこさ・やっとこせ・やっとこ・からがら・命からがら・心ならず・一杯一杯・精一杯・たかだか・首の皮一枚・ぎりぎり・ほうほうの体てい・滑り込み・漕ぎ着ける・冷や汗をかく・危機一髪・きわどい・薄氷を履ふむ・サバイバル・虎口を脱する・やれやれ・命冥加・一髪・一髪千鈞せんきんを引く・とりあえず・ひとまず・間に合わせる・何はさておき・何はともあれ・差し当たり・まんまと

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精選版 日本国語大辞典 「せめて」の意味・読み・例文・類語

せめ‐て

  1. 〘 副詞 〙 ( 動詞「せむ(迫)」「せめる(責)」の連用形に「て」が付いてできたもの。対象に間隔を置かず、さしせまって、逼迫(ひっぱく)して、の意から )
  2. ① ( 他にせまり他をせめる意から ) しいて。むりに。たって。つとめて。
    1. [初出の実例]「せめて対面にと言ひければ」(出典:平中物語(965頃)二七)
    2. 「いとどいみじき物思ひさへまさる心地して、恥づかしくいみじけれど、せめてのたまへば」(出典:宇津保物語(970‐999頃)俊蔭)
  3. ② ( 自分にせまり自分をせめる意から ) 切実に。しきりに。熱心に。
    1. [初出の実例]「時をいつとはわかねどもせめてわびしき夕暮れはむなしき空を眺めつつ」(出典:平中物語(965頃)三)
    2. 「人やあるともおぼしたらで、せめて弾き給を、きこしめせば」(出典:大鏡(12C前)六)
  4. ③ 非常に。ひどく。たまらなく。はなはだしく。
    1. [初出の実例]「せめておそろしきもの、夜鳴る神」(出典:枕草子(10C終)二六四)
    2. 「せめてさうざうしき時は、かやうにただ大方にうちほのめき給ふ折々もあり」(出典:源氏物語(1001‐14頃)幻)
  5. ④ ( ①から⑤へ移る過程的な意味で ) むりにがまんすれば。しいていえば。
    1. [初出の実例]「是はせめて俗人なれば言ふに足らず。彼の文観僧正の振舞を伝(つたへ)聞こそ不思議なれ」(出典:太平記(14C後)一二)
  6. ⑤ 最小限これだけは実現してほしかった、実現してほしい、という話し手の気持を表わす。これだけでも。少なくとも。
    1. [初出の実例]「ぜひなく位を押し取られ給て、せめて廿年の御宝算をだにも保たせ給はず」(出典:金刀比羅本保元(1220頃か)上)
    2. 「跡に留(とど)めし妻子共も如何成りぬらんと責(せめ)て其の行末を聞て後心安く討死をもせばや」(出典:太平記(14C後)一一)

せめての語誌

( 1 )中古前期から副詞として用いられた。この時期に、動詞から派生した副詞は「併せて」「改めて」「強ひて」など数が多い。
( 2 )もともとは、派生する元の動詞「せむ(迫)」の意を残した情態副詞であったが、③のように程度副詞としても用いられるようになった。⑤のような、現代語で使われる叙述限定を表わす用法は、中世からその用例がみられる。

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