日本大百科全書(ニッポニカ) 「ゼルテン」の意味・わかりやすい解説
ゼルテン
ぜるてん
Reinhard Selten
(1930―2016)
ドイツのゲーム理論家、実験経済学者。エスペラント語の普及運動家としても有名。ドイツ占領下にあったポーランドのブレスラウ(現、ブロツワフ)に生まれる。フランクフルト大学で数学の博士号を取得し、ベルリン自由大学、ビーレフェルト大学、ボン大学などの教授を歴任。1994年に、「非協力ゲームのナッシュ均衡に関するパイオニア的分析」によって、J・F・ナッシュ、J・C・ハーサニーとともにノーベル経済学賞を受賞した。
1965年に発表した論文「Spieltheoretische Behandlung eines Oligopolmodells mit Nachfrageträgheit」で、展開形ゲームにおいてナッシュ均衡が多数存在する場合に、合理性の低い均衡点を排除する「部分ゲーム完全均衡」(subgame perfect Nash equilibrium)の概念を導入し、ナッシュ均衡を精緻(せいち)化させることにより、ゲーム理論の信頼性を向上させた。また1975年の論文「Reexamination of the Perfectness Concept for Equilibrium Points in Extensive Games」では、プレイヤーが小さな過ちを犯しても成立する均衡の概念を打ち出し、ゲーム理論をより洗練された体系とした。
[金子邦彦]