現行の事業についてはほぼ自動的に予算をつけ、新規事業のみを厳しい査定の対象とするという増分主義予算編成法とは異なって、現行の事業も新規事業と同様に毎年ゼロを出発点として分析し査定して予算を編成する手法。ZBBと略称される。ZBBは、希少な資源をもっとも効率的に配分することによりマネジメントの効率性を高めることができる手法であるとして、近年、民間企業においても政府においても採用されている。
ZBBはP・A・ピアーにより提唱された予算編成方法であり、最初はピアーの勤務していたテキサス・インスツルメンツ社の経営の合理化のために同社のスタッフ・研究部門の1970年度予算を編成するために開発されたもので、翌71年度には同社の全部門の予算編成に拡大された。この経験に基づいてピアーが『ハーバード・ビジネス・レビュー』に投稿した論文が、ジョージア州知事に就任しジョージア州の行政の合理化が必要であると考えていたJ・カーターの目にとまり、カーターはピアーの協力のもとにジョージア州の1973年度予算編成にこの手法を適用した。さらに、カーターが大統領に選出されたことにより、ZBBは連邦政府の予算編成にも導入された。
ZBBは、デシジョン・パッケージの作成とデシジョン・パッケージのランク付けという二つの基本的ステップからなる。第一のステップでは、おのおの独立したアクティビティが現行のものも新規のものも分析対象とされる。デシジョン・パッケージは、マネジメントにあたる者が、他のアクティビティとの比較において評価しやすいような形で区分された独立したアクティビティ、機能、ないしオペレーションを示すものであり、その目的、そのアクティビティを遂行しない場合の影響、実績の尺度、代替案、費用などの情報を含まなければならない。第二のステップは、このように準備された各種機能に対するデシジョン・パッケージ間にランク付けをする作業であり、高いランクを与えられたデシジョン・パッケージから順に予算をつけていけば、限られた予算をもっとも有効に配分できる。
ZBB導入の鍵(かぎ)は、各アクティビティについて、種々の方法を開発し、比較評価し、もっとも高い評価のアクティビティから優先的に実施する点にある。したがって、同一の機能の遂行には種々の代替的方法があるということと、同一の機能を遂行するにも種々の努力水準があるという点の認識が重要である。特定のアクティビティについて、ある一定水準の規模で行うか、まったく行わないか、というような硬直的な二者択一の選択では効率的資源配分は不可能である。最低の努力水準のデシジョン・パッケージは、多くの場合に現行水準の50%から70%に決められる。増分主義の予算編成に慣れた者には、このような規模でのデシジョン・パッケージを作成すること自体厳しい要請であるが、この最低努力水準のデシジョン・パッケージでさえも、他の機能遂行のためのデシジョン・パッケージとの比較においては、採用されるという保証はない。すなわち、すべての事業が、現行のものも含めてゼロベースから検討対象とする点にZBBの最大の特徴があり、とかく必要度が低下したにもかかわらず予算を獲得し続けて財政の硬直化や財政難の原因となっている事態に対して、打開の武器となることが期待されている。
[林 正寿]
『P・A・ピアー著、中村芳夫訳『ゼロベース・マネジメント――経営効率化のための革命的手法』(1977・ダイヤモンド社)』
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
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