一般的には収入を得るために必要な経費をいうが,所得税法上の各種所得のうち,事業所得,不動産所得,山林所得および雑所得の所得金額を計算するにあたり,所得を獲得するのに要した費用のことで,〈必要経費〉として収入金額から控除される。その場合に,個人は消費生活を営んでいるので,業務外の支出である家事費は必要経費から除外される。必要経費は,売上原価や販売費,一般管理費などが中心であるが,減価償却資産や繰延資産については,一定の方式により一定の期間にわたり償却費を必要経費に算入する方式がとられている。さらに,若干の引当金(貸倒引当金など)も存在する。給与所得については,実際に要した金額を必要経費として控除することは認められていないが,収入金額に応じた給与所得控除が存在する(なお,1987年所得税法改正により,特定支出控除制度が採用され,概算経費控除の意味での給与所得控除に加えて,一定範囲内で実額控除を認める新しい制度が創設された)。また,譲渡所得については,資産の取得費および譲渡に要した費用の額が控除される。一時所得については,収入を生じた行為をするため,または収入を生じた原因の発生に伴い直接要した金額に限り,控除される。配当所得についても,元本取得のための負債利子に限り控除される。法人税の場合には,個人の事業所得の必要経費に相当するものを〈損金〉と呼んでいるが,一般の寄付金について損金算入限度額が設定されているほか,交際費については,損金不算入の割合を段階的に高めてきた。1982年の法改正以降は,資本金額・出資金額の小さな法人を除き全額が損金に算入されない。
執筆者:碓井 光明
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